“行ったら6日間は帰れない”島も 謎のエリアを旅する動画が大ヒットした理由とは
YouTubeチャンネル「どこにでも行くドスコイ」で投稿されている、謎のエリアを旅する動画が軒並み高い再生数を叩き出している。あまり知られていない土地をピックしたドスコイの旅動画はなぜ人気なのか。今回は、一風変わった旅動画の魅力を紐解いてみたい。 【写真】「日本のいちばん左」の街並み 人気ドラマの聖地も紹介 YouTubeで人気ジャンルのひとつに数えられる旅動画。多くの人々が訪れる定番観光地から最新のスポットを紹介するものまで、その内容は幅広い。そのなかで異質な存在感を放つ旅系チャンネルが「どこにでも行くドスコイ」だ。同チャンネルはドスコイというひとりの男性動画クリエイターが手掛けており、地理的に独特な場所を訪れては、その街や集落にフォーカスしたコンテンツを投稿。チャンネル登録者数22.5万人を抱える、注目の旅チャンネルだ(2024年11月4日時点)。 今年2月に投稿された「「日本のいちばん左」に初めて行ったら都会すぎて腰ぬかしました・・ここ発展させる日本すごすぎだろ!!!」は、157万回以上再生されているヒット動画。ドスコイが沖縄県八重山諸島の中心地・石垣島と竹富島、与那国島を訪問した際のものだ。この動画は約1時間の動画なのだが、人気リゾート地である石垣島と竹富島2つのエリアの紹介はわずか10分と少し。それ以外は日本最先端の地である与那国を紹介しているとあって、YouTube上でも数少ない、なかなか貴重な動画となっている。 石垣島から127キロ離れたところに位置する与那国島は、テレビドラマ『Dr.コトー診療所』(フジテレビ)のロケ地としてご存知の方も多いだろう。ドスコイは島の北側に位置する祖納集落と、西側の久部良集落、南側に位置する比川集落の3集落をまわり、行政施設や飲食店をはじめ、日本最西端の薬局や島内に1店舗しかないという理容店をはじめとした商店を紹介。与那国語(与那国方言)や人口事情のほか、わずか111キロという距離に位置する台湾との結びつきといった歴史にも触れている。2日目の夕食は、定休日や満席で飲食店に入ることができず、まさかのカップ麺という事態にも遭遇。「水曜日はお休みのお店がいくつかある」「飲食店は予約して行った方がいい」といった旅行には重要な現地情報もあり、旅の計画時にみておきたいコンテンツであることがわかる。 2023年10月に投稿された動画では、小笠原を訪ねたドスコイ。小笠原諸島の中心地である父島へのアクセスは24時間を要する週1便の船のみ、行ったら6日間は帰れないという「めちゃくちゃハードル高い」島で、ドスコイ曰く、「死ぬまでに1回行きたい」と話す場所だ。1876年に日本の領有権が確定した小笠原諸島だが、それ以前は「欧米系の白人とハワイの人たちが住んでいた」土地で、戦後にはアメリカの統治下に置かれていたという興味深い歴史を持つ。再生回数208万回を超えるこの動画では、その歴史や小笠原方言といった言語事情の解説のほか、父島唯一の医療機関や都営住宅、乗降自由区間が設けられている村営バスと、観光スポットを少し紹介している。 小笠原を紹介する動画で印象的なのは、「すみませんね、観光情報全然紹介しなくて」というドスコイの言葉。そう、動画の内容をみての通り、ドスコイのコンテンツは国内外のあまり観光地としてスポットが当たることのない“謎のエリア”を紹介するというニッチさに加え、観光情報よりも街に焦点を当てた内容が特徴なのだ。人気スポットももちろん出てくるが、そういったスポットはサラッと触れる程度。視聴者からも「ほかのYouTuberさんと違う視点で面白かった」「観光地ばかり取り上げられているので、こういう動画は興味深い」といったコメントが多数寄せられおり、こういったコメントから一定の視聴者から熱い支持を集めていることが読み取れる。 ドスコイの磨きのかかった旅先の選定と地理的要素にフォーカスしたコンテンツは、何やら街ブラに近いものが感じられるが、旅先のいろんな側面を知るにはもってこいではないだろうか。ドスコイのコンテンツは旅動画のイメージを塗り替える、“新たな旅動画”として、人気を集めているのかもしれない。
せきぐちゆみ