2000回電話も予約が取れず…足りない“児童精神科” 可視化される発達障害児と親の苦悩
■児童精神科医は「成り手が少ない」「子どもの精神疾患は診療が難しい」
精神科医の人数は年々増えているが、児童精神科が足りない状況。その理由には、一人前の専門医になるまで約14年の時間がかかる、診療の大変さと収入の問題などで成り手が少ないことが挙げられる。また、子どもの成長とともに病状が変化することや、親として子どもの障害を受け入れていく大変さなどが挙げられるという。
診断の難しさについて、国立国際医療研究センター国府台病院、児童精神科診療科長の宇佐美政英氏は「例えば5歳の自閉症の子どもが、7歳まで同じ自閉症の症状とは限らない。子どもは環境に大きく影響を受ける。単純に精神疾患の状態像だけではなくて、どんな環境なのか、隣の席は誰なのか、先生との相性はどうなのかによって見せる顔はだいぶ変わってくると思う」と説明。 さらに「児童精神科において、日本で安全性、有効性が認められている薬は少ない。例えば、うつ状態の子どもに対して、抗うつ薬はひとつもない。発達障害は、自閉症が2つ、ADHDが4つだけだ。統合失調症においても、ひとつしかない。もちろんそれ以外の薬も医者の裁量で使うが、限られてしまっているのが今の日本の現状ということだ」と付け加えた。
■「薬じゃなくてもできることはたくさんある」
そもそも、発達障害とは、自開症・アスペルガー症候群、注意欠如・多動症、読字障害などの学習症のこと。2005年の発達障害者支援法施行の認知広がりと、SNSの普及により、発達障害児は年々増え続けている。 井ノ上氏の長男は、発達障害を理解しているのか。井ノ上氏は「幼稚園の年長の頃、“僕はなんでこんなに怒りっぽいんだろう”と言ってきたことがあった。話せば分かると感じたので、この番組に出る際に話した。あなたは発達障害で、自閉症とADHDがある。だから病院にも行くし、療育にも通っているし、放課後のデイサービスにも通っているし、支援学級に通っていると話したので、本人は理解をしている」と明かす。 また、「そういうところに行き、治ることはないので、説明が難しいが、隔離をされることによって安全が保障されたり、普通学級と支援学級は活動が違う。あとは療育の先生も本人がこういうことをしたい、これはやりたくないという特性を持っているから、理解してやってくださっている。それを親が見て安心ができる」と続けた。 予約を取れない人はどうすればいいのか。宇佐美氏は「今、子どもの専門家を増やそうとしている。国が医者だけじゃなくて、心理やワーカーにも保険の点数がつくようになってきた。薬じゃなくてもできることはたくさんある。そういった意味では他職種で、医者以外の人たちをもっと活用して支えようと、今、厚労省が舵を切っている。病院の医者だけが頼りじゃなくて、もっと同じ職種の、同じ領域の他職種で支えていけると、もっと相談しやすくなるんじゃないかと思っている」と述べた。(『ABEMA Prime』より)