インフレ峠を越したシグナルか-スイス先行、FRBも3回利下げ想定
(ブルームバーグ): チューリヒでもロンドンでもワシントンでも突然、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)後に世界経済を悩ませてきた大きなインフレ不安が、中央銀行を夜も眠れない状態にすることがもはやなくなった。
米連邦準備制度は最近のデータを無視するかのように年内3回の利下げ想定を変えず、21日にはスイス国立銀行(中央銀行)が進んで利下げを開始した。激しく上昇していた消費者物価が落ち着いてきたという自信の表れだ。
FOMC、今年予想する利下げ回数3回で維持-2025年予想は減少
英国ではインフレが著しく緩和する中で、イングランド銀行(英中央銀行)金融政策委員会(MPC)のタカ派メンバーが利上げの主張を撤回し、欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁も、6月の利下げ決定が予定通りという最近のシグナルを繰り返した。
3月末時点で、経済的に恵まれた国々の一致したテーマは、一世代に一度の生計費ショックが落ち着きつつあり、すぐに緩和モードに移行してもおかしくないというものだ。スイス中銀が政策金利の予想外の0.25ポイント引き下げに動いたように利下げ見通しが現実味を帯びてきた。
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スイス中銀が予想外の利下げ、ECBとFRBに先んじる
2012年までスイス中銀総裁を務めた米資産運用会社ブラックロックのフィリップ・ヒルデブラント副会長はブルームバーグテレビジョンに対し、「われわれが峠を越えたことを世界に知らせるシグナルだ。各国・地域中銀は緩和に向かっており、これら全てが長期的にどこで落ち着くかが問題だ」と語った。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)のチーフグローバルエコノミスト、トム・オルリク氏は「米連邦準備制度とECBという超大型タンカーは、方向転換にしばらく時間がかかる。これら中銀の動きを見越してクロスカレンシーの流れを恐れ、スイス国立銀行は先手を打った。今後の大きな問題は、金利がどこまで低下するかだ。多くの人々が考えるように中立金利が上昇しているとすれば、政策金利はコロナ禍前より幾分高い水準に落ち着くかもしれない」と指摘した。