コントラバス1本で描き出す究極の無伴奏「第3回 無伴奏の世界」
「無伴奏」とは、伴奏を伴わないこと、またはそのような楽器を指す音楽用語だ。過去の作品においては、やはりJ.S.バッハの作品が際立って名高い。「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」を筆頭に、「無伴奏チェロ組曲」や「無伴奏フルートのためのパルティータ」など、1本の楽器の機能と、その奏者の能力を極限まで引き出す作品の魅力は、何物にも代えがたい。これらの名曲は、今や当該楽器のみならず、様々な楽器によって演奏されてきたことからも、その魅力の大きさが感じられる。 もちろんバッハの後に続く作曲家たちも負けていない。歴史を紐解いてみれば、パガニーニ、イザイ、クライスラー、バルトーク、プロコフィエフなどが、ヴァイオリンのために。そして、レーガー、ストラヴィンスキー、ヒンデミットあたりがヴィオラのために。チェロには、コダーイ、ブリテン、カサドなどの名作が存在するほか、他の楽器のための作品も目白押しだ。これはまさに、楽器の進歩もさることながら、演奏技術の圧倒的進化が成せるわざと言えそうだ。 さて、この「無伴奏」をテーマに開催される好企画「無伴奏の世界」の第3回目に登場するのが、コントラバスであることが興味深い。オーケストラの重低音を担うコントラバスは、アンサンブルの影の立役者と言える存在だ。そのコントラバス1本で奏でる「無伴奏の世界」とはこれいかに。 この稀有なステージの登場するのが、ドイツのSWR交響楽団(旧シュトゥットガルト放送交響楽団)コントラバス奏者の幣隆太朗(へい・りゅうたろう)となれば、これはますます期待が募る。 新進気鋭のコントラバス奏者が挑む“無伴奏重低音の異空間”を聴き逃すことなかれ。 第3回 無伴奏の世界 幣 隆太朗 コントラバス 7月6日(土)14:00開演 東京文化会館小ホール(東京・上野)