「大暴落」からの「史上最高値」を達成した日本の株式市場、荒れるマーケットに「一般人」はどう立ち向かえばよいのか
資本コスト経営の考えが芽生え、成長の土台は作られつつある日本経済
川崎:日本市場はいかがでしょうか。 中野さん:日本株はこの先も上昇していく環境が整ってきていると思います。PERを見ても割安水準になっていますし、日本企業そのもののあり方改革が進んでいます。資本コスト経営といって、資本を効率よく使って稼ぐ努力を始めた会社が増えてきているのです。株式市場では資本をベースにして、そこからどれだけの利益を生み出すのかという利益率を見ています。昭和のモデルは、企業は資本がたくさんあり規模が大きい方がよい、利益率は二の次という考えもありましたが、令和の今は違います。しっかりと利益率を見て、資本が少なくても利益をしっかりと出そうとする企業が良い企業なのです。きちんとした経営をしないと生き残ることができないと気づいた企業は、この先もどんどん利益率を上げていくでしょう。その土台ができているので、日本市場も変革のタイミングになっていると思います。 川崎:投資をする方も、ちゃんと企業を見極めないといけないということですね? 中野さん:個人投資家が自分で見極めができればいいですが、難しいですし、そんな時間もないという人が多いでしょう。やはり投資信託を活用した方がいいでしょうね。この先の日本経済の中で生き残り、成長していくような企業を厳選して投資をする投資信託です。
8月の大暴落を帳消しにした日本市場
川崎:2024年8月には歴史的な大暴落が起きました。でも2024年11月末日の時点では、ほぼ帳消しにしていますよね?この値動きは妥当だと思いますか? 中野さん:あの大暴落を引き起こした大きな要因は金利の引き上げです。でも数字を見れば0.25%で、金利が上がったというレベルではないのです。ではなぜあれほどの混乱を招いたのかというと、「日銀は今後も金利を上げていきます」という含みをもたせことで、市場が大きく反応してしまったからです。今振り返ると、「あれ?どうして売ってしまったのだろう」という人も多いと思いますよ。あの時はあの暴落に耐えられずにもう売ってしまおうと思ったのでしょうが、それはマーケットの雰囲気にのまれてしまったことも理由です。マーケットには雰囲気や気持ちがとても大きく関係しますからね。 川崎:金利はこれからも上がるのでしょうか? 中野さん:今は金融政策の大転換の時です。日銀はずっと金利を下げることをしてきたのですが、これからは上げていくぞという意識を示していると私は思います。そのインパクトは大きいので市場も過剰に反応しますが、一般生活者は金利の上昇を受け入れることになりますね。預金金利は上がりますが、一方でローンの金利も上がっていきます。また日本はインフレ社会になっていますから、給料がなかなか上がらない中で実質的に貧しくなっています。食品や日用品の値上がりは生活に直結するので肌で感じているでしょうから、賃金と物価の好循環への対策もきちんと考えていく必要がありますね。 川崎:将来を見据えた資産運用が必要ということですね? 中野さん:NISA制度が新しくなってもうすぐ1年です。周りを見てもNISAを活用して資産形成をしている人が増えているのではないでしょうか。そのような話は堂々とはしないかもしれませんが、いよいよ自分事として考えようと思っている人も多いとは思いますね。様子見の1年から実行の1年に変える時期かもしれません。 川崎:一方で8月の大暴落は多くの人が知っているので、また起きたらどうしようと思って、二の足を踏んでいる人も多いとは思いますね。 中野さん:マーケットは常に動いていて、何かしらの要因で暴落が起きる可能性はいつもはらんでいます。でも、あの8月の暴落のときにちゃんと株を買っている人もいるわけです。我々のファンドの運用チームも、暴落時をバーゲンセールだと思ってきちんと対応しました。個人が判断するのは難しいので、大切なのはマーケットに居続けること。ファンドを買っているなら、良いファンドを持ち続けることです。その場の雰囲気や怖いという気持ちに流されずに、やめないことなんですね。今日明日で結果が出ることではないからこそ、時間をかける。そのことをあらためて考えさせられた2024年ですし、長期的な視点を持とうと改めて決意する2025年にしてほしいと思います。
川崎 さちえ(フリマアプリ・ネットオークションガイド)