【日本ダービー】メリーナイスと根本康広騎手の「1.0秒差」圧勝劇 3歳馬の頂上決戦の「記録」を振り返る
皐月賞14着からの大逆転
2着とのタイム差でディープインパクトに続くのが、1992年ミホノブルボンと2009年ロジユニヴァースの0.7秒。このロジユニヴァースもまた、異色のダービー馬と言える。 新馬勝ちから札幌2歳S、ラジオNIKKEI杯2歳S、弥生賞といずれも強い競馬で4連勝。無敗で迎えた皐月賞では単勝1.7倍の圧倒的支持を集めたが、そこでまさかの14着と惨敗を喫した。ちなみに、勝ったのは「三強」と目された中で一番人気がなかったアンライバルド。「三強」の一角だったリーチザクラウンも13着に敗れる波乱の一戦だった。 それでも、ファンはダービーでロジユニヴァースを2番人気に支持した。大雨の影響で不良馬場となったなか、藤岡康太騎手とジョーカプチーノが果敢に逃げ、2番手にリーチザクラウン、3番手にロジユニヴァースという隊列。直線ではインを突き、早め先頭から押し切った。鞍上の横山典弘騎手にとってはこれがダービー初制覇。そしてこの勝利は、1986年以降で“最も前走着順が悪いダービー馬”誕生の瞬間でもあった。 前走大敗から巻き返してのダービー制覇としては、1986年のダイナガリバーが皐月賞10着から勝利をあげているが、この他に前走二桁着順から勝利した馬はいない。それどころかメリーナイスとワグネリアンが前走7着から、アドマイヤベガが6着から勝利をあげた以外はすべて前走掲示板内からの勝利だった。ロジユニヴァースは着差も含めて記録にも記憶にも残るダービー制覇だったと言える。 そんなロジユニヴァースの祖母であるソニンクは、孫のダービー制覇を皮切りに着実に牝系を拡大。ディアドラやソングラインといった歴史に名を残す名馬を輩出した。 昨年のダービーにもフリームファクシと青葉賞馬スキルヴィングを送り込んだが、フリームファクシは10着。スキルヴィングはレース中に急性心不全を発症してしまい、ゴール後に倒れ込みこの世を去るという不幸に見舞われた。今年こそ、全人馬ともに無事に走り切るダービーとなることを願うばかりである。 ライタープロフィール 緒方きしん 競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。
緒方きしん