【番記者の視点】町田、首位再浮上の理由「連敗すると崖から…」危機感あおる黒田剛監督のマネジメント
◆明治安田J1リーグ▽第9節 FC東京1―2町田(21日・味スタ) 【町田担当・金川誉】町田が首位に返り咲いた。前半14分、この試合に向けて準備してきたセットプレー(CK)から、ファーサイドのFWナサンホが右足ボレーを決めて先制。PKで同点とされたが、同25分にはDFドレシェビッチのロングフィードに抜け出したJ1初先発の大卒ルーキーDF望月ヘンリー海輝のクロスを、FWオセフンがダイビングヘッドでたたき込んだ。後半は危ない場面も迎えたが、安定した守備でしのぎきった。 前節(13日)は昨季王者の神戸に敗れ、首位から3位に転落した町田。それでもJ1初挑戦のクラブにとって、3位は決して悪くない順位のはずだ。しかし黒田剛監督(53)は、チームの危機感を徹底的にあおった。FC東京戦に向けた準備期間には「連敗すると一気に崖から転がり落ちるような悲劇としっかり選手達を向き合わせた。転がったら速い。気づいたら10位以下というところも出てくる、と」。決して今の順位で一息つくようなことがないよう、厳しくチームにアプローチしたという。 黒田監督はこの試合、神戸戦から先発5人を入れ替えた。元日本代表DF昌子源、望月、MF高橋大悟、宇野禅斗、そして出場停止明けのGK谷晃生だ。5人はリーグ戦から大幅にメンバーを入れ替えた17日のルヴァン杯・北九州戦で勝利に貢献し、この試合の先発をつかんだ。昌子は「自分が入って、もう負けるわけにはいかない、という思いはありました」と明かしていた。 J1初昇格チームに豊富な経験を買われて加入し、すぐキャプテンに就任した昌子だが、今季開幕直前にチームメートと接触して負傷し出遅れた。初先発は4月3日の広島戦。しかしこの試合でチームは今季初黒星を喫し、昌子は後半13分に途中交代となった。「たぶん、怪我以外で(試合途中に)代えられたのは3、4回目。自分としてはもちろん悔しかった。フォーメーションが、とか色々あるけど、自分がダメだったから変えられたので。それを受け止めました」。練習からアピールを続け、つかんだ広島戦以来のリーグ戦先発。この日はいい意味で余裕やうまさ、などを見せることなく、泥臭く町田のサッカーを体現してみせた。 このタイミングでの先発起用に、昌子は強い危機感を持って挑んでいた。それは他のチャンスを与えられた選手たちも同じだろう。昨季、J2では一度も連敗なく優勝を果たした町田。黒田監督は連敗への強い拒否反応をチームに与え、さらに出場機会が少なかった選手達の危機感もパワーに変えた。U―23日本代表として戦うMF平河悠、FW藤尾翔太を欠く中でつかんだ首位再浮上。選手層に厚みを増すきっかけにもなりうるこの勝利は、新たな自信をチームに与えることになりそうだ。
報知新聞社