オードリー春日俊彰が念願のBS冠番組で見せた“ドケチ”と表裏一体の無邪気さ(鈴木旭/お笑い研究家)
12月、思わず「おかわり!」とうなってしまった番組が「オードリー春日の知らない街で自腹せんべろ」(BSテレ東)だ。4日、11日と2週にわたって放送された、“無類のBS好き”を公言するオードリー・春日俊彰の冠番組である。 【写真】令和ロマンが「連覇を目指します!」と予告していた「M-1グランプリ2024」開催会見 何より秀逸なのが、「超節約を貫く春日が、自腹の1000円で見知らぬ街の居酒屋を満喫する」というコンセプトだ。できるだけ安く酒とツマミを味わうべく、春日はあちこちの店を回ってメニュー表とにらめっこを繰り返す。必然的に店内よりも道中のスタッフとの会話にスポットが当たり、そのゆるさにこちらのニヤニヤが止まらなくなるのだ。 1週目はJR総武線・平井駅周辺、2週目は京成電鉄本線・堀切菖蒲園駅周辺を巡回。入店するや否や、春日は“ご存じの”とばかりに「私ですけども」とメニュー表をもらいに行き、価格をチェックしては次の店へと足を運ぶ。平日夕方の割引施策であるハッピーアワーを「幸福時間」、風情ある街並みを「シブパク」(「渋くてインパクトがある」の略。「ボキャブラ天国」(フジテレビ系)の「バカパク」に由来)と表現するなど独特の“春日語”も刺さる。 ■思い出のポークライスを再現 また、「町中華で飲ろうぜ」(BS-TBS)に出演する玉袋筋太郎の名言「6・3・3、大人の義務教育」(ビール大瓶の容量633ミリリットルにかけた洒落)を持ち出し、ピンと来ていないスタッフに「何っにも見てないな!」「逆にすごいよ、その状態でBSの番組に挑むっていう裸一貫の感じが」と言い放つなど“BS流”を指南するシーンも熱い。安さを正義とし、BSを愛する春日ゆえの魅力が堪能できる至高の番組だった。 昨年2月に開催された「オードリーのオールナイトニッポンin東京ドーム」では、妻のクミさんから「ラーメン屋で味玉をトッピングさせてくれない」と暴露されるなど、いまだ“ドケチ”エピソードが絶えない春日。それでも慕われ続けるのは、何事にも全力で向き合う真っすぐさと表裏一体になっているためかもしれない。 持ち前の身体能力を生かし、潜水企画、ボディービル、フィンスイミング、エアロビクス、水中ベンチプレスなど数々の競技に挑戦。いずれも好成績を残し、水中ベンチプレス43回はギネス世界記録に認定された。一方で、「水曜日のダウンタウン」(TBS系)の「48時間耐久不眠クイズ」に代表されるような体を張った企画の常連でもある。 さらには、学生時代に相方の若林正恭と通った町中華「長楽」が閉店したことを受け、思い出の味「ポークライス」を再現するため奔走。店主の息子にレシピを聞き、試行錯誤を繰り返した完成品をふるまって若林を感心させていた。この周囲を巻き込む無邪気さが、今も人を引きつけるのではないだろうか。 (お笑い研究家・鈴木旭) ◇ ◇ ◇ 春日俊彰の魅力とは、その「頑固さ」にあるという。関連記事【もっと読む】実はクレーマー気質 ルールを与えればオードリー春日は頑固なほどに全うする…では、本人のかたくなさが生み出す魅力について伝えている。