光化門の軍事パレードを眺めながら【寄稿】
ハンネス・モスラー(カン・ミノ) | ドイツ・デュースブルクエッセン大学政治学科教授
ある日、ソウルの光化門(クァンファムン)一帯で、突然上空を戦闘機が強い雷のような轟音を立てながら何度も低空飛行する姿を見て、びっくりした。数日後、国軍の日の軍事パレードに向けた練習だったことが分かった。2年連続でソウルのど真ん中に兵士とタンク、恐ろしい兵器を誇示するのは、全斗煥(チョン・ドゥファン)第5共和国以来初めてで、極めて異例である上、行事予算(80億~100億ウォン)が大々的なパレードのなかった国軍の日より数倍多く、企業から寄付を募らなければならないほどだという。それだけでなく、昨年と同じく今年も予行練習中に将兵2人が重傷を負った。ならば、このような無理をした理由は何だろうか。韓国政府当局は頑なながらも、久しぶりに率直な答えを示した。将兵の士気高揚、対北朝鮮抑止力の誇示、防衛産業輸出のための兵器の広告などの必要性を、2年連続で軍事パレードを強行した理由に挙げた。一つずつ詳しく見てみよう。 まず、将兵たちを本当にそのように大事にするなら、その莫大な予算はむしろ実戦訓練や他の戦力補強、将兵の処遇や服務条件の改善に使わなければならない。また、軍隊内の差別と虐待、事故と不正がこれ以上発生しないように、軍の質を高めることに力を入れるべきだ。そして国家の呼びかけに、ひいては市民のために最善を尽くして無念の死を遂げた(海兵隊員)C上等兵特検法に繰り返し拒否するのではなく、この事件に対する徹底した真相究明のために真剣に努力を傾けることが将兵のための正義であり常識だ。 次に、制服を着て武装した兵士たちが一糸乱れぬ隊列を成し、いわゆる「怪物」兵器と共に行進するパレードは、昔も今も国内外に向けた軍事主義的戦略だ。内部的には、皆がきちんと隊列を組んで団結してこそ強いという規律のシグナルを送るもので、通常は国家の武力使用独占権を乱用する権威主義国家の指導者が、典型的な訓育と恐怖の統治戦略の一環として使う場合が多い。外部的には強い意志を持った兵士たちと強力な武器を保有しているので、我々を挑発してはならないというメッセージと、対立が発生した場合、相手を退けるか撃退できるというシグナルを送ることで、抑止力を強化しようとする戦術だ。すなわち、いわゆる力による平和の論理だ。しかし、最近イスラエルの場合でも見られるように、武力のみに基づいた平和は問題を解決するのではなく、軋轢の発生をただ抑止することによってむしろ弱肉強食という強者の法則構造と暴力を再生産し、増幅させる危険をはらんでいる。このため、一国が有事の際に自国を守り、他の国を助けるためには、攻撃的な力である武力が必要であることは確かだが、初めから攻撃を受けておらず、自国を守るために武器を持たなくてもいいように相手を引き入れるためには、命とお金を節約できるポジティブな力である魅力があってこそ、真の持続可能な平和が実現できる。 韓国の武力は、すでに天下無敵に近い水準だ。米国という強力な軍事同盟があり、韓国軍の通常兵器の軍事力は世界5位(世界軍事力評価機関「グローバルファイアパワー」・GFP)であり、頻繁な防衛産業展示会のおかげで韓国の兵器の優秀性はすでに広く知られている。韓国はすでに世界武器輸出上位10カ国にランクインしている(ストックホルム国際平和研究所・SIPRI)。同様に、韓国の魅力も遜色がない。政治を除けば、大衆文化やIT技術、経済など、いかなる国際ソフトパワー指数を見ても、いわゆる韓流からも分かるように、韓国が世界の人々に大きな人気を集めていることは明らかだ。 問題は、この二つの力、武力と魅力を適切に結合させ賢く活用するためには、国家指導層の一定水準の洞察力、すなわち単なる恐怖と抑止だけを強調する戦略と戦術の代わりに、和解と対話も積極的に活用する平略と平術が求められる。韓国政府のこのような「大きな徳が国中を照らす」なら、光化門も平和な日常が再び訪れるかもしれない。 ハンネス・モスラー(カン・ミノ) | ドイツ・デュースブルクエッセン大学政治学科教授(お問い合わせ japan@hani.co.kr )