大坂なおみは「率直で誠実」ゆえに傷ついた...社会活動、メディア対応、そして重圧をめぐる「真実」
<大坂なおみのメンタルヘルスと「素顔」に迫る新著を出版したベン・ローゼンバーグに聞く>
大坂なおみのメンタルヘルスに迫る新著を出版したジャーナリストのベン・ローゼンバーグに、本誌メレディス・ウルフ・シザーが聞いた。 【動画】英キャサリン妃のテニスコートでの行動に、ボールガールが「ルール違反です!」と注意 ──大坂なおみにとって最大のチャレンジは何だと思う? 究極のチャレンジは、内気で外界から遮断されていた頃の自分と、世界的なスターになった今の自分の折り合いをつけること。その終わりなき闘いだろう。 この本を書いたおかげで、私は思春期の彼女の孤立について、より深く理解できるようになった。 テニスの夢をひたすら追い求める両親のせいで、少女時代の彼女は「普通」の社会性を養うことができなかった。でも大人になってから、その遅れを取り戻そうとしている。しかも衆人環視の状況で。私たちの目の前で、彼女は日々成長し、学び、進化している。だから彼女は強い。 ──今の彼女は社会活動家でもある。それはテニス選手としてのキャリアにプラスか、それともマイナスか? 私がこの本を書こうと思ったのは、なおみが目覚ましい活躍をした2020年の夏だ。彼女はトーナメントを通じて人種的正義の問題に取り組んだ。警官の人種差別的な暴力に遭った黒人被害者の名を記したマスクを着けて、全米オープンの舞台に立った。 なおみはメジャー大会に出る選手としてかつてないほど、活動を前面に押し出した。そしてそれを重荷と感じたり、集中力を欠いたりすることなく、むしろインスピレーションやモチベーションに変えて、人生最高の勝利をつかんでみせた。 ──なおみが記者会見に出ないと発言したことに驚いたか。 会見ボイコットには不意を突かれた。なおみはメディアに対して特に悩んでいる様子もなく、非常に率直に対応することで知られていた。でも後から考えると、そうした率直さと誠実さのために、彼女はとても傷つきやすくなっていた。決まり文句で逃げたりせず、全ての質問に本気で答えていたから。 ──22歳で、なおみは女性アスリート史上最高の収入を手にした。それが過度のプレッシャーを感じる一因になったと思うか。 もちろん。そして、それはスポーツ界の選手や代理人があまり理解していないことだと思う。スポンサーは、選手が成し遂げたことだけでなく、次に成し遂げることにお金を払っている。だから、その期待に見合ったプレーをしなければいけない。これはとんでもないプレッシャーだ。 ──なおみは今年からコートに復帰し、もっと4大大会で勝つという野心的な目標を掲げている。どんな活躍を見せてくれるだろう。 なおみのチームは自信に満ちあふれている。彼女はコーチのウィム・フィセッテと再契約した。なおみがトレーニングで見せるやる気は以前とは段違いで、ウィムは非常に感銘を受けているそうだ。故障さえなければ、今年だってビッグタイトルを狙えないわけがない。 ──執筆中に最も驚いたことは? 学びが多かったこと。まだ26歳だが、彼女は何年も前から大変な有名人だ。しかし彼女の人生には、まだ知られていないことがたくさんあって、そこが驚きだった。幼少期に父親の自主映画に出ていた事実や、WTA(女子テニス協会)ツアーにデビューした頃に一家が立ち退きを迫られていたことなど、私の知らないパズルのピースがたくさんあった。 全てをまとめることで、私は彼女がこれまで歩んできた道だけでなく、これからどこへ向かおうとしているかも理解できた。それが読者に伝わればと思う。 Adapted from naomi osaka. Copyright© 2024 by Benjamin Rothenberg. To be published on January 9, 2024, by Dutton, an imprint of Penguin Publishing Group.
メレディス・ウルフ・シザー(本誌記者)