東北から能登教訓つなげ 農家や漁師ウェブで座談会 住民主体の復興探る
東日本大震災の教訓を能登半島地震の復興に生かしてもらおうと、東北出身の農家や漁師ら有志が石川県の被災者とウェブで座談会を続けている。過疎高齢化が進む中山間地で、1次産業をなりわいとする東北と能登。住民主導の復興に向け、話し合いの機運が芽生えている。 【画像】真剣な表情で意見交換する漁師 座談会を主催するのは、民間団体「能登を支える東北の会」だ。産直アプリなどを運営する「雨風太陽」代表で、岩手県花巻市の高橋博之さん(49)らが立ち上げた。炊き出しなどの被災地支援をする中で「東北は10年かけて若者が流出する地域をつくってしまった。能登に同じわだちを踏ませたくない」と考えた。 同会が呼びかけ、12日までに5回、能登と東北をウェブでつなぎ、産業の復興、市民協働のまちづくりなどをテーマに話し合ってきた。成功体験や失敗談、現在の課題などを東日本大震災の被災者に語ってもらう。 2月中旬に金沢市で開いた3回目座談会では、漁業の復興をテーマに東北とウェブでつないで話し合いをした。港を離れホテルなどで二次避難をする輪島市の漁師らが参加。岩手県の漁師らが避難生活や再建までにかかった時間や、漁の再開までにどう過ごしたかを共有した。 釜石市の漁師、久保宣利さんは東日本大震災で大学生ボランティアの受け入れを契機に、復興に前向きになれたことを説明。「1次産業と遠く離れた消費者だった大学生が産業の一端に触れ、現在も続く関係人口になってくれたことは大きな財産」と振り返った。 これまで参加した能登の農家らが、座談会を契機に勉強会をするなどの機運も芽生えている。高橋代表は「復興に大切なのはそこに暮らす人々が地域の未来を自分たちで考えること。住民一人一人が能登の未来を考えて復興に進めるよう、東北の経験を役立ててほしい」と話す。
日本農業新聞