演出・杉原邦生、KUNIO16『ゴドーを待ちながら』上演決定
KUNIOの新作公演、KUNIO16『ゴドーを待ちながら』の上演が決定した。 『ゴドーを待ちながら』は、サミュエル・ベケットが1952年にフランス語で初出版し、その翌年にパリで初演されて以降、不条理演劇の代名詞として多くの演出家によって上演し続けられている戯曲。今回、KUNIOでは、2016年に河合祥一郎が主宰する“Kawai Project”での上演時に新翻訳を行った台本(未出版)を元に上演を行う。 【全ての画像】杉原邦生の写真ほか 出演は、小田豊、外山誠二を中心に、所属する劇団「柿喰う客」にとどまらず幅広く活躍する大村わたる、杉原邦生演出の木ノ下歌舞伎『勧進帳』にて弁慶役で強烈な印象を残したリー5世、という杉原が信頼を寄せる俳優たちと、今回が舞台初挑戦となる中山翔貴まで、バラエティに富んだ顔ぶれとなった。 上演は2024年6月、神奈川・KAAT神奈川芸術劇場にて。 ■演出・美術 杉原邦生 コメント とある公演の終演後、楽屋のベンチで雑談しながら、何の気なしに「今後演ってみたい戯曲ってあるんですか?」と尋ねたとき、小田豊さんは「死ぬまでに『ゴドー(を待ちながら)』を演りたい」と、即答してくれました。『ゴドーを待ちながら』は、僕自身いつか上演したいと思い続けていた作品のひとつでしたが、KUNIOの企画会議で何度か候補にあがっても、その度、いま(その時)ではない気がして、先送りになっていました。だから、なんだか勝手に運命的なものを感じてしまい、その場で「じゃあ、KUNIOで企画していいですか?」と言ってしまいました。こうして、今回の上演は思いもかけないきっかけからスタートしたのです。 僕たちは、忙しなく日常を動き続けているとき、〈動かぬもの〉に気づけないことがあります。その〈動かぬもの〉とは、物理的に存在しているものだけではありません。終わりの見えない課題、変えようのない事実、答えのない問い、自分の中にある感情、記憶もしかすると、僕たちはいつも、それら〈動かぬもの〉に気づけていないのではなく、気づけていないことにしているだけなのかもしれません。なぜなら、そのものたちに真剣に目を向けようとしたとき、僕たちの思考もまた、忙しなく動き続ける日常の中で〈動かぬもの〉になってしまうからです。 小田さんと『ゴドー』を演ろうという話をして、さっそく戯曲を読み直してみたとき、なぜか、涙が溢れてきました。あの場から動かぬふたりの男たちは、必死に〈動かぬもの〉に対峙しようとしている、そう見えたからなのかもしれません。そして、あのとき何の気なしに聞いていた小田さんの「死ぬまでに」という言葉が、僕の中に〈動かぬもの〉として残っていたからなのかもしれません。 目まぐるしく動きつづける現代で、僕たちはいま、多くの〈動かぬもの〉にどう向き合うべきなのか。そんなことを考えながら、絶大な信頼を寄せるお馴染みのキャスト、スタッフと共に、KUNIO版『ゴドーを待ちながら』をお届けしたいと思っています。 <公演情報> KUNIO16『ゴドーを待ちながら』 6月22日(土)~30日(日) 神奈川・KAAT神奈川芸術劇場〈中スタジオ〉 ※受付は開演の45分前、開場は30分前より 原作:Samuel BECKETTS “EN ATTENDANT GODOT” 翻訳:河合祥一郎 演出・美術:杉原邦生 【出演】 小田豊 外山誠二 大村わたる リー5世 中山翔貴