遮蔽された室内のロボットアームを操作して電子顕微鏡にデブリを配置する=大洗町成田町

日本原子力研究開発機構（原子力機構）は20日、東京電力福島第1原発から試験的に取り出した溶融核燃料(デブリ)を受け入れる大洗研究所(茨城県大洗町)の分析施設を公開した。遮蔽(しゃへい)された施設内で高線量のデブリを取り出し、分析データを炉内の状況把握や今後の取り出し規模拡大に生かす。本年度中に結果を公表するとしている。 公開されたのは照射燃料集合体試験施設(FMF)。デブリは「除染セル」と呼ばれる部屋に最初に搬入される。室外からマニュピレーター(アーム)を操作し、数グラムのデブリを幾十にも包んだ容器内から取り出す。 除染セルに続きデブリが運ばれる「金相セル」は、同様にアームを使ってデブリを配置し、電子顕微鏡を使って表面の元素の分布状況を観察する。分析室では透過型の電子顕微鏡を使い、研磨などで加工したデブリに含まれるウランの結晶構造などを分析する。 福島第1原発のデブリは炉心溶融(メルトダウン)を起こした1～3号機で計880トンあると推計されている。各号機で形状や堆積範囲が異なり、性質や状態など未解明な点も多い。 東電は22日、福島第1原発2号機の原子炉格納容器からデブリの取り出しを始める予定。デブリの回収まで2週間程度を見込み、運搬用の専用容器に入れてFMFに運ぶ。 分析結果からウランや鉄などが混ざるデブリの構成を把握するほか、臨界の可能性や事故時の溶融温度、冷却速度などを推定する。今後の廃炉作業やデブリの本格的な取り出しの安全確保に役立てる方針だ。 原子力機構燃料材料開発部の前田宏治部長は「ようやく本格的なデータが取れる。デブリの性質や状態を知り、効率的な取り出しや保管方法への知見を提供したい」と話した。