買収ショック? メルカリへの経営権譲渡決定後から2試合続けて勝てない鹿島のなぜ?
あまりにもタイミングが悪い。クラブの筆頭株主変更が電撃発表された直後に、それまでの3連勝から一転して2試合続けて勝ち点を落とした。ともに試合終了間際に喫した失点でひとつは引き分け、もうひとつは苦杯をなめた。常勝軍団・鹿島アントラーズに何が起こっているのか。 湘南ベルマーレのホーム、Shonan BMWスタジアム平塚で3日に行われた明治安田生命J1リーグ第21節。後半16分と28分の連続ゴールで一気に2-2に追いついたアントラーズだったが、6分間が表示されたアディショナルタイム、それも最後のワンプレーで悪夢に見舞われた。 土壇場でベルマーレが獲得した左コーナーキック。ファーサイドを狙ったMF梅崎司(32)の正確なキックに、身長174cmのセンターバック・坂圭祐(24)が勢いをつけて宙を舞う。マーカーより頭がひとつ以上も抜きん出た高さから放たれたヘディング弾が、無情にもゴールネットを揺らした。 坂のマーク役であり、直前にはトラップミスからコーナーキックにつながるベルマーレの攻撃を許していた、アントラーズのゲームキャプテン・永木亮太(31)が思わず唇をかんだ。 「最後の最後まで集中しなければいけないところで、みんなに申し訳ない気持ちでいっぱいです」 3日前の7月31日に埼玉スタジアムで行われた、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)の関係で未消化だった浦和レッズとの明治安田生命J1リーグ第16節でも、アントラーズは1-0で迎えた後半43分に失点。そのまま試合を終え、勝ち点1を手にしただけに留まっている。
振り返れば同30日に、アントラーズを運営する株式会社鹿島アントラーズ・エフ・シーの経営権が日本製鉄(本社・東京都千代田区)から、フリーマーケットアプリ大手の株式会社メルカリ(本社・東京都港区)へ8月末をめどに譲渡されることが発表されている。 住友金属工業時代から常勝軍団の親会社を担ってきた日本を代表する重厚長大型産業から、創業わずか6年半で急成長を遂げたIT企業へ。Jリーグを代表する名門クラブの親会社変更は、日本サッカー界全体にも少なからず衝撃を与えた。ならば、アントラーズの選手たちも動揺したのだろうか。 「いや、チーム側からもちゃんと説明があったので。発表があってからのこの結果なので、もしかするといろいろと言われるかもしれないですけど、選手としては特に気にはしていません」 ベルマーレ戦で2戦連続ゴールとなる、一時は同点とするPKを決めたFW伊藤翔(31)が、メルカリの件とその後の試合結果は関係ないと強調した。伊藤によれば7月30日の発表前に、大岩剛監督(47)以下の首脳陣、選手、スタッフ、クラブ職員を一堂に集めて説明会が行われたという。伊藤が続ける。 「時代が変わればクラブ経営の仕方も変わるという説明のなかで、だからといって現場は何かが変わるというわけではなかったので。練習場が変わるとか、ホームスタジアムが変わることではなく、現場はいままで通りやってください、ということだったので」 クラブハウスで説明に当たった鹿島アントラーズ・エフ・シーの庄野洋代表取締役社長(66)は、茨城県鹿嶋市からメルカリ、日本製鉄との緊急合同記者会見が行われた東京・文京区のJFAハウスへ急いで向かった。真っ先に現場へ伝えることで誠意を示し、動揺と混乱を未然に防いだことになる。