マツダ・ロードスター「日常使いが楽しいクルマ」実は貴重な存在!軽快なハンドリングに惚れ直した!
【 2023年、今年のクルマこの1台】というテーマで印象に残ったクルマを振り返る当企画、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員も務めるモータージャーナリストの工藤貴宏 氏はどんな一台を選んだのだろうか? 【写真を見る】マツダ・ロードスターは軽快なハンドリングが持ち味。※記事中に画像が表示されない場合はこちらをクリック TEXT:工藤貴宏(KUDO Takahiro) PHOTO:中野幸次(NAKANO Koji)
「990S」はND型ロードスターのなかで最軽量のモデル
「アルピーヌA110R」のピュアなハンドリングもよかったし、「シボレー・コルベットZ06」の刺激も凄かった。「メルセデスAMG S 63 E PERFORMANCE」の802馬力も、加速の“太さ”に驚いたなあ。 というわけでいろいろ乗った2023年だったけど、何を隠そうもっとも感銘を受けたのは「マツダ・ロードスター」だった。グレードは「990S」。もう生産が終わって新車では購入できない、ND型ロードスターのなかで最軽量のモデルだ。発売直後の試乗会でも乗ったことはあったけど、先日、新型への切り替えでその広報車両が“卒業”してしまうのを前にお借りしてしばらく一緒に過ごしてみたのだ。そしたら、ヤバかった。 正直に言うと、ロードスター990Sに乗っての素直な気持ちは「やっぱり乗らなきゃよかった」だ。クルマはよくないかといえば、そうじゃなくてむしろ真逆。良すぎたのだ。 だって、楽しすぎるんだもん。欲しくなっちゃうんだもん。マジで惚れてまうやないか!
「スピードを出さずゆっくり流すだけで楽しい」というクルマ
ロードスター990Sの何が素晴らしいかといえば、軽快なハンドリングだ。ハンドルを切るとスッと向きが変わり、旋回中もスーッとニュートラルステアを維持して曲がっていくのが気持ち良すぎる。 そのうえで、ロードスター990Sが見事なのは速度を出さなくても楽しいこと。普通に交差点を曲がるだけでも爽快だし、ゆっくりと峠道を走るだけもスッと心の曇りが取れたかのように晴れやかな気持ちになれる。ゆっくりと走りつつ、コーナーの後半では直線に向かってジワジワとアクセルを踏み込んでいくときの感覚(後輪駆動車のお手本的にノーズが内側に入り込んでいく感覚が強い)が実に楽しい。 この感覚は、シンプルだけど本当においしいラーメンみたいなもの。クセの強い色物的なラーメンの対極であり、単純だけど味わい深すぎる。 「スピードを上げれば気持ちいい」というクルマは世にたくさんあるけれど、「スピードを出さずゆっくり流すだけで楽しい」というクルマはそうは多くはない。そういう意味で、ロードスター990Sはとっても貴重な存在だ。 というわけで、2023年秋にあらためて990Sに乗って以来、頭の中ではロードスターの購入シミュレーションがグルグルしているワタクシ。唯一の救いは、新車販売が終了してからその深い魅力に気が付いたことだ。だって、惚れ込みすぎて新車販売していたらたぶん買っていただろうから。 というわけで今の心配事は、最新のロードスターに試乗して990Sと同じ感動を得たら、間違いなくロードスターを買ってしまいそうなこと。 本当はソフトトップの2.0Lエンジン搭載車が登場するのを待つつもりだったんだけど、990Sに乗って「やっぱパワーよりも軽さが大事だよな……」と、2.0Lモデルよりも軽い1.5Lモデルに気持ちがグラついているのはここだけの内緒だ。
工藤 貴宏