首里城火災の記録を沖縄県公文書館に寄贈した男性 首里の歴史の一部を後世につないでほしい
沖縄テレビ
5年前の2019年10月31日未明、沖縄文化の象徴ともいえる首里城が焼失しました。 夜空が赤く染まり、辺りに火の粉が舞う中、崩れ落ちる首里城を見届けなければとカメラを回し続けた男性がいました。 火災の記録を後世に託したいと話す男性の思いを取材しました。 那覇市首里当蔵町に住む石崎雅彦さんです。あの日の深夜、妻に起こされ、窓の外が妙に明るいことに気がついた石崎さん。祭りの準備でもしているのだろうと思った矢先、飛び込んできたのは、目を疑うような光景でした。 石崎雅彦さん: 「これは普通じゃないなということで急遽カメラを持ち出して、まさかこんなおおごとになるとは思わなかった」 石崎さんは火災が発生した直後、午前2時50分過ぎからビデオカメラで撮影を始めました。 炎に包まれ、崩れゆく正殿。いつでも首里城を臨めるようにと建てた自宅からの見慣れた景色は一変していきました。 石崎雅彦さん: 「無くなって寂しいとかそういうことではなくて、もう今目の前でこの燃えていることを受け入れるのが精一杯でした」 首里城の最期を見届けなければ。石崎さんは時おり熱風を浴びながらも、カメラを回し続けました。 そこには、首里で生まれ育ち、首里城と向き合ってきた住民の一人としての強い使命感がありました。 石崎雅彦さん: 「もうこれはどうしても残さないといかんと。お城が燃えているこの事実をとにかく記録したかった」 炎がようやくおさまったのは翌日の昼過ぎ。石崎さんのカメラには鎮火後の現場検証まで、断続的に収められていました。 猛火の中で崩れ落ちる正殿や、鎮火後の現場検証までの一部始終を記録した貴重な映像。 石崎さんは2020年に県公文書館に寄贈しました。首里の歴史の一部として次の世代に繋いでいきたいと話します。 石崎雅彦さん: 「首里城はこれまで5回6回燃えていると言うけれども、何の資料も実はないわけですよね。これ100年経ったらひょっとして誰かが使えるかもしらんなということで、個人で持っているよりは公に預けましょうということで公文書館に提供しました」 「多岐にわたる部分でそれが活用してもらえるんであれば本望ですよね」 着々と再建が進む首里城正殿。復興に向けては県の内外から多くの寄付が集まり、修復作業の現場には絶えず人が訪れるなど、焼失したあの日から記憶は薄れることなく、日に日に人々の関心が高まっていると石崎さんは感じています。 石崎雅彦さん: 「焼ける前の首里城と一緒で威風堂堂と、それこそ世界に誇れる首里城になると思いますよ」「本当に失って初めてわかったけれども逆に失ったおかげで新しい歴史の語り部になる建物になるんじゃないかな」 石崎さんは首里城の側でその姿を見守り続けます。
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