downt、DURDN、えんぷてい……時間や空間にまつわるコンセプトアルバムを生み出すバンド
えんぷてい、時間芸術そのものをコンセプトにすることで得た普遍性
えんぷてい 物語的なコンセプトでアルバムを発表しているのが、5人組バンド えんぷていだ。1stアルバム『QUIET FRIENDS』(2022年)は“星と星の旅行”を、2ndアルバム『TIME』(2024年)はその名の通り“時間”をテーマに制作されている。普遍的な作品を目指したという『TIME』には、ラストナンバー「宇宙飛行士の恋人」とオープニング曲「Turn Over」が連続する仕掛けが施され、砂時計が描かれたジャケットアートワークやアルバムタイトルと共に「アルバム1枚37分を砂時計のようにひっくり返して繰り返し聴いてほしい」(※2)という願いを強く表象している。この願望には、彼らがアルバムを通して聴くものだと考えていること、時間芸術品としての側面を意識していることが表れているだろう。 時間芸術品を追究することとコンセプトを確立することは不可分であり、その際に表題として“時間”を選ぶこと、すなわち時間をテーマに時間芸術を生み出すことは、“コンセプトをコンセプトにする”ようなものだ。『TIME』は作品をコンセプチュアルにすること、コンセプトに時間を選ぶことの双方の働きによって、より強固なテーマ性を確保したのである。そして、それによってえんぷていが伝えたかったこととは、〈あなたの全てになれないままで/朝食を作る ひとり 雨も避けずに/それが愛と気づく〉と歌う「あなたの全て」や〈誰かになれない僕のままで/許していけるのだろうか〉と揺らぐアイデンティティを吐露する「ハイウェイ」に顕著なように、愛や時間の不可逆性である。いつの時代にも通底している悩みや思想に対する彼らの答えが詰め込まれた1枚は、インディーロックやシティポップ的なサウンドと融合しながら老若男女を問わずに共鳴し得るどこか懐かしい作品となったのだ。 ここまで紹介してきた3バンドは、初期の作品から一貫した世界観にこだわった作品作りをしている。より完成度の高いものを求めた結果として1つのコンセプトへと洗練されていったのか、元来一貫した構想を持っていたのかは分からない。しかし、彼らがこだわりの詰まった1枚を提示することで、自分たちのスタイルを確立したことは間違いないのだ。 ※1:https://realsound.jp/2024/04/post-1642158.html ※2:https://music.spaceshower.jp/news/259227/
横堀つばさ