【社説】増える不登校 実態を把握して孤立防げ
学校に通うのが苦痛なら無理して通わなくていい。最優先すべきは子どもの心身の安全であると、保護者や教員、社会の認識が変わってきた。 とはいえ、不登校の子どもが増え続けている現実を見過ごすことはできない。 文部科学省は、2023年度に30日以上欠席した不登校の小中学生が34万6482人だったと公表した。 11年連続で増加し、新型コロナウイルス禍の20年度から10万人以上増えた。全体の3・7%に当たり、35人学級では1クラスに1人は学校に行っていない計算になる。 この数字に対する印象は、世代によって異なるかもしれない。驚きや不安を持つ人も多いだろう。 不登校の理由は子どもによってさまざまだ。実態と要因の把握、分析が対策の第一歩となる。 文科省は毎年、学校や教育委員会に調査している。要因が学校の見方、判断に偏っているとの指摘があり、今回から設問を変更した。 例年は「無気力、不安」といった子どもに起因する理由が最も多い。一方、不登校経験者らに調査すると、先生や友達との関係、勉強が分からないなど、学校に由来するものが多くなる。 文科省はこれを踏まえ、学校が把握した子どもたちの相談内容を複数回答できるようにした。 その結果、相談内容の上位に「学校生活に対してやる気が出ない」「不安・抑うつ」「生活リズムの不調」が挙がり、複数の理由が絡んでいることがうかがえる。 子どもたちが無気力や不安になったのはなぜか。その背景を掘り下げる必要がある。調査方法の改善を重ねてもらいたい。 問題なのは、不登校の子どもの4割が学校内外で専門的な相談や指導を受けていないことだ。 相談窓口や民間支援などの情報が行き渡らず、子どもだけでなく保護者も悩み、孤立している姿が目に浮かぶ。 17年施行の教育機会確保法には「学校以外の場での多様な学習活動」の重要性が明記されている。 近年、学習指導要領にとらわれずに授業を柔軟に編成できる学びの多様化学校(不登校特例校)やフリースクールなどが増えた。学校とフリースクールの連携が進む。 空き教室を活用し、一人一人の関心や能力に沿った学習ができる校内教育支援センターを開設する学校もある。 こうした学びの場を子どもと保護者が選べるようにするには、学校と自治体による情報提供が欠かせない。 子どもには教員に相談できないことがあり、カウンセラーのような専門職に気軽に相談できる体制は必須だ。 自治体と提携する民間団体が家庭訪問をして、子どもを支援する取り組みもある。学校に行けない子どもと保護者を孤立させてはならない。
西日本新聞