共感力が高い人と低い人の違いとは?ビジネスで使える共感力の高め方
昨今のビジネスでは、部署・職種の枠、会社の枠、業界の枠を越えてさまざまなバックグラウンドの人が連携・協業する機会が増えてきました。そのような場面で重視されるのが、他者への「共感力」です。ビジネスシーンで共感力が必要とされる理由、共感力を発揮する効果、共感力の高め方などについて、公認心理師・精神保健福祉士の川島達史さんにお話を伺いました。
ビジネスで求められる共感力とは
そもそも人はなぜコミュニケーションをとるのでしょうか。コミュニケーションは、大きく分けると「目的を達成するためのコミュニケーション」「人間関係を築くためのコミュニケーション」があります。 目的達成のためのコミュニケーションの場合、ロジカルな会話で成立するため、「感情のやりとり」はそれほど必要がありません。一方、悩みを相談できるような信頼関係を築き、「この人と一緒に仕事がしたい」と思えるようになるためには、「共感」を伴うコミュニケーションが欠かせません。 また、ビジネスとは突き詰めると「人が抱える悩みや感情を理解し、改善・解決すること」を目的とします。つまり、人の気持ちがわからなければ、ニーズをつかむことができません。ニーズに沿う商品やサービスを生み出したり販売したりするにあたっては、共感力は非常に重要です。
共感力が高い人の特徴と低い人との違い
共感力が低い人と高い人の違いは、どのようなシーンで表れるのでしょうか。共感力が高い人の4つの特徴と低い人との違いを解説します。 ◇1.質問する 共感力が高い人:相手の「感情」を引き出す 共感力が低い人:「情報」を確認する質問だけで終わる 例えば、同僚が「旅行に行ってきた」と話したとしましょう。「いつ?」「どこへ?」「何を目的に?」「交通手段は?」といった5W1Hの情報を聞くだけでは、共感のしようがありません。 共感力が高い人は「楽しかった?」「いい思い出はできた?」などと、感情を問う質問を投げかけます。それを受けた相手はエピソードを楽しそうに話し、感情の共有につながるでしょう。 悩みや苦労などのネガティブな話題であっても、質問する際は「何がつらい?」など、感情を引き出すワードを入れるのがポイントです。 ◇2.相手の悩みに反応する 共感力が高い人:まずは感情を受け止める 共感力が低い人:即座に課題解決に走る 「最近、どうしても遅刻してしまうことが多くて、自己嫌悪です」。そんな悩みを聞いたとき、「なぜ遅刻するの」「どうすれば遅刻しなくなるだろう」と、すぐに「原因分析・課題解決」しようとする人は少なくないと思います。悪いことではありませんが、共感しているとは言えません。 上記のように相手が「自己嫌悪」という感情を吐露しているのであれば、それを受け止め、共感する言葉を返すことが大切です。 このときのコツの一つは「相手の感情を繰り返す」です。ただし、「自己嫌悪に陥っているんだね」とそのまま返すのではなく、「自分のことが嫌いになってしまっているんだね」と、相手の言葉を少し変えて返すと自然です。 また、明らかに相手に非があったり理不尽なことを言っていたりする場合でも、まずは相手の立場に立って受け止め、相手の状況を認める姿勢で向き合います。心理学的には「無条件の肯定」といいます。 例えば「仕事でやる気がでない。どうしても納期が遅れてしまう」という部下がいた場合、上司の反応としては、「やろうと思う気持ちはあっても遅れてしまうんだね。一緒に対策を考えよう」と共感することが大切です。 このように共感すれば、部下は「相談してよかった。改善に向けて努力しよう」と前向きな気持ちになれるでしょう。 ◇3.議論する 何かのテーマについて議論するとき、共感力が低い人と高い人では「主語」が異なります。 共感力が高い人:「そうか、山田君は○○と感じているんだね。 なるほど、鈴木さんは○○な気持ちなのか」 共感力が低い人:「私としては○○してほしい」「会社としては○○だよ」「社会的には○○だよ」 共感力が高い人は、主語を相手にして「あなたの立場ならそう感じるのも当然だよね」と、相手の立場を尊重しながら対話を進めます。 ◇4.対話するときの態度 対話をするときの態度も、共感力の有無によって変わってきます。 共感力が高い人:相手に身体の正面を向ける/目を合わせる/言葉に感情を込める/話す速度を相手に合わせる 共感力が低い人:腕組みをする/目を合わせない/言葉が棒読み/早口 こうした態度から、相手は「話をちゃんと聞いてもらっているか」を感じとり、信頼して話せる人かどうかを判断します。 このほかに、「間の取り方」も大切です。対話中、相手が考え始めて沈黙の時間が流れることがあります。雑談などであれば、会話が途切れると気まずく感じ、急いで新しい話題を振ったりするでしょう。 しかし、悩み相談の場面では、共感力が高い人は相手が考える時間やペースを尊重します。あえて質問せず、話し始めるのを待つのです。 一方、共感力が低く、かつ頭の回転が速い人は、自分が主導権を握り、次々と質問を投げかけてしまう。その結果、相手は本当に言いたいことが言えなくなってしまうのです。