西部ガスが快勝で2回戦進出 小柄でも「チームに勢いもたらす」2年目の1番打者が躍動【社会人野球日本選手権】
◆社会人野球日本選手権1回戦 西部ガス5―0JR東日本(31日、京セラドーム大阪) ■本家応援団を上回る動き「くまモンが一番キレキレ!」【動画】 5大会連続6度目出場の西部ガス(九州・福岡)は、樋口昇樹(23)が先制を含む2本の犠飛を放つ2打点の活躍を見せると、投げても高椋俊平(28)から村田健(30)への継投でJR東日本(関東・東京)をシャットアウト。5―0の快勝で2回戦進出を決めた。 「最後、勝ち切れたというところでは、すごくうれしかったというところですね。普段通りの野球ができたかなと思っています」 そう振り返った松薗史敏監督(35)は、北海道・駒大苫小牧を高率いて2004、05年に夏の甲子園を連覇したアマ球界の名匠・香田誉士史前監督(53)=現駒大監督=からその座を引き継ぎ、今季から監督に就任。12年の創部時の選手1期生で、西部ガスにとっては初の〝生え抜き監督〟になる。「初めての新任監督なんで、特に失うものは何もない。失敗を恐れずにやっている結果が今のところはうまくいっているのかなとは思います」という若き指揮官は、選手たちにも常に「失敗を恐れずにやろう」と呼びかけ続けているという。 その〝松薗イズム〟を体現したのが、入社2年目で1番打者に定着した樋口だ。大分・藤蔭高で夏2度の甲子園出場を果たし、専門学校の沖データコンピュータ教育学院に進んだが「よりレベルの高いところで野球がしたい。プロ野球への夢を追い続けたいと思ったので」と昨年入社。身長170センチと野球界では小柄と呼ばれるサイズだが「振る力がある」と松薗監督が評するように、真っ向勝負のフルスイング。1回の第1打席に放った左中間への一打は、外野手が前に出てきたシングル性の当たりだったが「試合前に監督から『打撃も走塁も積極的に』という話があったので、あそこは〝いくだけ〟と思っていました」と俊足を生かして二塁打に。得点にこそつながらなかったが「チームに勢いをもたらせてくれるような打撃を常にしてくれる」と松薗監督は評価する。 続く3回1死三塁の第2打席で184センチの長身左腕、JR東日本・西居建陽(28)の140キロ直球を逆方向に運んでの右犠飛で先制点をたたき出すと、9回1死三塁では左犠飛で駄目押しの5点目を挙げ「下位打線がチャンスを自分に回してくれたので、あとは自分がかえすだけだと思って打席に立ちました」と勝利に貢献した。 12年前の創部直後は「社会人野球の力は全くなかったと思う。バラバラのチームでした」と松薗監督。初めてのオープン戦で、ソフトバンク3軍に0―20の大敗。当時ショートを守っていたという松薗監督は「このままじゃダメだと思い知らされた」。エラーの連続で、アウトが重ねられず、ぼうぜん自失となった屈辱のスタートから「今はピッチャーが良くて、守り勝つというところをテーマにして、それがしっかりできているというのは、チームとしての成長を感じますし、やってきたことが実を結んで、うれしいなと思います」と松薗監督。過去5度の日本選手権で、最高成績は2回戦止まりだが「結果を出そうとせずに、普段通りやるべきことを徹底してやりたい。その結果がその先のところに進むことになればいいかなと思います」。〝2回戦の壁〟を突き破り、新たな歴史を刻むつもりだ。
西日本新聞社