関東大震災時の朝鮮人犠牲者追悼式に「そよ風」嫌がらせ
「官製ヘイト」が追い風
そうして飛び出した「破壊宣言」だった。今年レイシストが掲げた垂れ幕の一つには「群馬の次は東京だ!」とあった。2月に、やはり「そよ風」の言いがかりをきっかけに群馬県立公園の朝鮮人労働者追悼碑を粉々に破壊し、撤去した山本一太知事の「官製ヘイト」もまた成功体験になっていた。 追悼式典であいさつした宮川泰彦実行委員長は「碑は幅広い市民や都議の全会派、都知事の賛同で建立された。都は碑文の内容にも主体的に関わっている。そうした経緯から追悼辞を送るのは当たり前だ」と強調した。追悼式典と偽慰霊祭がフェンスで仕切られ、都職員と警察官が目を光らせるという鎮魂とはほど遠い景色が常態化して久しい。そうした中、器物損壊という犯罪の予告までなされた。それも虐殺を正当化したいという差別を動機にしたヘイトクライムの予告である。都はどこまで加担すれば気が済むのか。 朝鮮人虐殺の史実を追った『九月、東京の路上で 1923年関東大震災 ジェノサイドの残響』の著書があるノンフィクションライター、加藤直樹さんは「都所有の碑を破壊するという団体に公園を使わせることなどあり得ない。19年と23年にヘイトスピーチがあったことも認定されており、人権尊重条例や都立公園条例に基づき使用を不許可にする条件はそろっている。許可する方がおかしい」と言い、一方で変化も強調する。「碑の撤去という『そよ風』の思惑通りになっていないのも確か。虐殺の史実を知り、それを許さない世論が広がっている。声を上げ続け、集会をさせないところまで追い込みたい」。
石橋学・『神奈川新聞』記者