『ジェーン B.とアニエス V. ～ 二人の時間、二人の映画。』

　ジェーン・バーキン没後1年追悼企画『ジェーン B.とアニエス V. ～ 二人の時間、二人の映画。』として、『アニエス V. によるジェーン B.』と『カンフーマスター！』のデジタルレストア版・新訳日本語字幕版が、8月23日よりヒューマントラストシネマ有楽町、テアトル梅田、京都シネマ、シネ・リーブル神戸ほかにて全国公開されることが決定した。 【写真】『ジェーン B.とアニエス V. ～ 二人の時間、二人の映画。』のほか2種のポスター 　2023年7月16日に急逝したジェーン・バーキン。フランスの国民的アイコンの死に、カトリーヌ・ドヌーブ、シャーロット・ランプリングら多くの映画人や音楽家、そしてマクロン大統領が弔意を示し、その死を悼んだ。一方のアニエス・ヴァルダは、“ヌーヴェルバーグの母”として、『幸福』『歌う女、歌わない女』『冬の旅』などの作品を世に残し、2019年に90歳で亡くなった。ヴァルダがプライベートでも親交のあったバーキンを、自由で創造的なアプローチで映像化したのが、『アニエス V. によるジェーン B.』と『カンフーマスター！』だ。 　『アニエス V. によるジェーン B.』は、バーキンが40歳の誕生日に、自身の30歳の誕生日を回想する間、ヴァルダの彼女への尽きることのないイメージが広がっていくように展開する作品。その空想の中のバーキンは、犯罪映画の妖婦、サイレントシネマの凸凹コンビ、モンローのような男たちのファンタジーの対象、よくあるメロドラマの恋人たち、西部劇のカラミティ・バーキン、ターザンとバーキン、そしてジャンヌ・ダルクへと自由自在に変化する。一方で、バーキンとセルジュ・ゲンズブールや娘たちとの日常も綴られる。そのどれもが、シャイで大胆で逞しくて危うくて儚くて美しい、バーキンの魅力を伝えている。 　『カンフーマスター！』は、バーキンの発案にヴァルダが応じる形で映画化が実現した作品。この作品の制作の延長線上で、『アニエス V. によるジェーン B.』が撮影されている。娘ルシー（シャルロット・ゲンズブール）が自宅の庭で開いたパーティーで、泥酔した同級生の少年ジュリアン（マチュー・ドゥミ）を介抱したマリー・ジェーン（ジェーン・バーキン） は、あろうことか15歳の少年に不思議な感情を抱く。ジュリアンもまた、40歳のマリー・ジェーンに恋愛感情を抱くようになる。微妙な力関係の中、人目を盗んで密会を重ねる2人。そんなある日、2人がキスを交わしているところを、ルシーに目撃されてしまう。パリとロンドンのジェーンの自宅と実家で撮影。娘のシャルロット・ゲンズブールのほか、アンドリュー・バーキン、バーキンの実の両親などファミリーが総出演し、ヴァルダと夫ジャック・ドゥミ監督の実子であるマチュー・ドゥミも出演している。 　バーキンの没後1年を追悼して、この2作品が新たにデジタルリストア版・日本語字幕新訳版で公開。『アニエス V. によるジェーン B.』の新訳は、『ジェーンとシャルロット』『恐るべき子供たち 4Kレストア版』の横井和子、『カンフーマスター！』の新訳は『ソウルに帰る』『エッフェル塔～創造者の愛～』の橋本裕充が手がけた。 　あわせて公開された3つのパターンのポスターデザインは大島依堤亜が担当。これまでフランソワ・オゾンやアキ・カウリスマキなどのヨーロッパ映画を多数く手がけた大島だが、ヴァルダとバーキンの作品を手がけるのは初となる。 　また予告編は、『ジェーンとシャルロット』の予告編も手がけた遠山慎二が演出。映像では、シャルロット・ゲンズブールやルー・ドワイヨン、ジャン＝ピエール・レオーらの姿も確認できる。 　さらに、バーキンの1周忌にあたる7月16日に、ヒューマントラストシネマ有楽町（東京）とテアトル梅田（大阪）にて『ジェーンとシャルロット』が1日限定特別上映されることが決定。東京では、バーキン本人やシャルロット・ゲンズブールと交流のあった著述家の村上香住子とバーキンがアルバムを発表するたびにインタヴューを重ねていた音楽評論家の松山晋也を、大阪では、バーキンが京都に訪れた際に親睦を深めた茶道家の木村宗慎とシャルロット・ゲンズブールに番組でインタビューしたことがあるラジオDJの岡村詩野を招いてのトークも予定されている。