米中対立で貿易・投資ブロック化の兆し、世界経済に打撃も-IMF
(ブルームバーグ): 国際通貨基金(IMF)が先週発表した調査研究によると、世界経済は米国と中国をそれぞれ中心とする2つのブロックに分断される兆しを見せているが、まだ冷戦時代ほどには分裂は進んでおらず、非同盟経済圏の役割がより大きくなっている。
IMFのゴピナート筆頭副専務理事らエコノミストが執筆した最新ワーキングペーパー(WP)によると、2022年のロシアによるウクライナ侵攻開始以来、米国ブロックと中国ブロック間の貿易フローは同一ブロック内の貿易よりも約12%多く減っている。また、これらブロック間の外国直接投資(FDI)プロジェクト数も同期間に同一ブロック内のプロジェクト数よりも約20%多く減少した。
同論文はブロック間の貿易フローとFDIプロジェクト数の減少は経済的にも統計的にも有意だとしながらも、東西間の貿易が3分の2減少した冷戦時代と比べればわずかだと指摘。
ただ「分裂の程度はまだ比較的小さく、それがどのぐらいの期間続くかは不明だが、今後、地政学的緊張が高まり、貿易制限的政策が強化されれば分裂はかなり進む可能性があるということを冷戦期の地政学的分断は示唆している」と説明した。
「コネクター」経済圏
同論文は冷戦時代と大きく異なるもう一つの点は、非同盟経済圏の多くがブロック間の 「コネクター 」経済圏という新たな地位を得ていることだとし、「世界の貿易と投資が底堅く推移しているのは、主に貿易フローがコネクター国を経由するようになったためだ。これらの非同盟諸国は、地理経済的な分裂が進むことで恩恵を受ける可能性がある」と分析した。
冷戦時代は、高い貿易障壁や輸送コストなどが障害となり中立国は貿易の仲介役を担わなかった。
米国と中国の戦略的競争が激化するなか、IMFは分断がもたらす経済的ダメージについて警告してきた。IMFの試算によると、このダメージは長期的には世界の国内総生産(GDP)の最大7%と、独仏を合わせた規模に達する可能性がある。