「ジジイを舐めている」怒りの老ハンターが語る、猟友会が“駆除辞退”した町で起きていること〈ハンターは“駆除拒否”へ〉
山岸らが5月に起こした〈駆除辞退〉というアクションが、今回の北海道猟友会による〈駆除拒否〉という選択に影響を及ぼした可能性もありそうだ。 その山岸は、今回の騒動をどう見ているのか。
駆除拒否は「当然の帰結」だった
「一言でいえば、当然の帰結だったんじゃないかな、と思います」 今回の騒動についての受け止めを尋ねると、山岸は開口一番、そう口にした。 「そもそも猟友会というのは、狩猟を趣味とする人たちの民間のサークルにすぎません。自治体の下請けではないし、ヒグマの駆除をすることを条件に狩猟許可をもらっているわけでもない。我々としては駆除はあくまでボランティアであり、報酬は度外視して、いわば善意でやってきたことなんです。ところが自治体の担当者の中には、猟友会がヒグマを駆除するのは当然ぐらいに考えている人も少なくない。このギャップを埋めなければ、いずれクマを撃つ人なんて誰もいなくなる。この状況に一石を投じるために我々は駆除辞退という行動に踏み切ったんです」 山岸らの決断がニュースで報じられると、山岸のもとには全国の猟友会関係者から「よくぞ言ってくれた」という声が多く寄せられた。 「“断るという選択肢もあるんだ”ということにみんなが気付いたんだと思います」
二言目には「予算がない」という自治体
ただ、山岸らは何も役場を困らせるつもりで辞退したわけではない。彼らの主張は、これまで猟友会に丸投げ状態だったヒグマ駆除を、持続可能な体制に再構築することにあったのだが、奈井江町側にその思いは伝わらなかったという。 「例えば、駆除時の連携を密にするために携帯電話を活用したいと提案したら、役場の担当者は“個人の携帯は使えない”“新たな携帯を確保する予算はない”“条例を変えないと対応できない”。生命の危険のある仕事をする以上、そのリスクをミニマライズするためにある程度の予算がかかるのは当然のことだと思うのですが、二言目には『予算がない』と言われて、話がまったく進まなかった」 山岸らが駆除を辞退した後、奈井江町側は報酬を増額した上で、猟友会に所属していない町内在住の80代のハンター1人と町外のハンター10人にヒグマ対策を委託する“新体制”を発表した。