<高校野球>練習で金属バット使えぬ敦賀 ゴルフパターなど独創的練習で快進撃 21世紀枠候補校
3月19日に兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕する第92回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)の出場32校が1月24日、選考委員会で決まる。そのうちの3校は、困難な環境の克服や地域貢献など他校の模範となるべき要素を選考条件に加えた「21世紀枠」で選ばれる。20回目を迎える21世紀枠。全国9地区の候補校から北信越・敦賀(福井)を紹介する。【石川裕士】 【写真特集】歴代の「21世紀枠」出場校 ゴルフパターやテニスラケット、芯に穴を開けてロープを通した竹製バットなどを手に、敦賀の選手たちはバント練習をする。近くではトランポリンに弾ませた球を打つティー打撃をしたり、ひもでつるしたバスケットボールをバットでたたいたり。いずれも吉長珠輝監督(33)や選手が考案したもので、平日約2時間の練習で14種類のメニューがある。 練習拠点だった敦賀市営球場が老朽化などで2014年夏に使えなくなった。翌年春、OBや保護者が校内の荒れ地を整地して新グラウンドを作ったが、テニスコート約2面分と狭く、近隣住民に配慮して打球音の響く金属バットが使えない。前身の敦賀商時代を含めて全国大会に春夏計21回出場の古豪は存続も危うくなった。 福井商の主将兼捕手として夏の甲子園に出場経験のある吉長監督は「限られた環境で厳しい練習をしても誰も入部しない」と考え、独創的な練習を次々導入。「選手を飽きさせない、理にかなった練習」を目指した。 バント練習では狙った所に転がす感覚を養うためにパターでゴルフボールを打ち、球とバットを直角に当てる感覚を身につけるためにテニスのラケットと球を使う。「自分の体をどう使うかの感覚を身につけるのが大事」と説く。 チームは昨秋、福井県大会で準優勝し、北信越大会で36年ぶりの初戦突破。県大会全5試合で9犠打を決めた2番・秋田大我(2年)は「最初は半信半疑だったが、実際に練習すると効果があると分かる」と強調する。 選手25人の多くが同市出身。吉長監督は「守備位置ごとの見え方を知るために」と全員に全ポジションを指導し、練習試合で全員を起用。進学校だけに冬場はバッテリー組と野手組に分け、練習時間中に宿題を終える「勉強日」を一日おきに設ける。「保護者や地域の野球指導者になった時、経験を生かしてほしい」。部員の将来を見据えつつ、59年ぶりの春に手が届くところまできた。