「郷土が汚れる」移転できなかったハンセン病療養所、高潮にのまれ196人死亡…語り継ぐ「人災」
青木美憲園長（59）は「同じ過ちを繰り返さないために何をすべきか、私たち一人一人の姿勢が問われている。90年前に保養院で起きたことから目を背けてはならない」と語る。
跡地で追悼
1996年にらい予防法が廃止され、国の誤った隔離政策は終わった。翌年、同自治会が跡地に石碑を建てた。周辺は現在、工場地帯となっている。
2014年には市民グループ「外島保養院の歴史をのこす会」が設立された。史料を収集し、冊子やDVDの作成、講演で歴史を語り継ぐ活動を続けている。
屋さんらとともに共同代表をつとめる堺市南区の元高校教員、三宅美千子さん（82）は、自宅近くが移転の候補地だったことを知り、活動に参加した。「地域が移転を受け入れていれば、入所者らは命を落とさずにすんだ。市民が排除する側にいたことを忘れてはならない」と話した。
毎年9月、石碑を前に追悼式典が開かれてきた。数十人いた参列者は高齢化で年々減少しているが、今年も27日に屋さんや青木園長らが中心となって執り行う。
◆室戸台風＝1934年9月21日、高知県の室戸岬付近に上陸した猛烈な台風。最大瞬間風速60メートルを記録し、死者・行方不明者3036人、浸水家屋は約40万棟に達した。大阪市では、高潮が押し寄せ、海岸から4キロ以上浸水した。
