親の介護「ナッジ」で楽に 円満な解決法、行動経済学理論で提案 竹林さん(青森大客員教授)ら新著
介護を巡る家族間の気持ちのすれ違いを、行動経済学の理論「ナッジ」で少しでも楽に-。青森大学客員教授の竹林正樹さん(青森市出身)らが「介護のことになると親子はなぜすれ違うのか ナッジでわかる親の本心」を刊行した。人間の心理・行動パターンに即したコミュニケーション方法を活用し、「介護する側、される側双方が消耗しない」円滑な解決方法を提案している。 勧められた介護サービスを拒み、心を閉ざす親、ひっきりなしに鳴る「財布が盗まれた」コールに悩まされる息子-など、高齢者介護でよくある事例を漫画仕立てで紹介する同書は、竹林さんと看護師・ケアマネジャーの神戸貴子さん、山口大学教授の鍋山祥子さんの共著。登場するエピソードは3人の実体験を基にしており、「読者に同じ失敗をしてほしくない」との思いがにじむ。 各事例の解決法で駆使されているのが、強制せず相手の行動変容を促すナッジ理論。「免許返納を勧めると不機嫌になる父」には「いきなり返納を切り出す前に、点検などで車と物理的距離をおいてみる」など親の本音に寄り添った対処法やアドバイスが並ぶ。 竹林さんによると、高齢の親を正論で説得してもうまくいかないのは「自分に都合良く解釈をゆがめてしまう脳の習性(認知バイアス)」のため。「相手がついそうしたくなる心理」を突く提案で、介護される側の受け入れ態勢を整えることが重要だと説く。 祖母の介護経験がナッジを学ぶ端緒になったという竹林さんは「同じ内容でも話す場所や人、タイミングで判断は大きく変わる。このコミュニケーション方法・ナッジを知れば多くのすれ違いは防ぐことが可能で、介護問題に直面する多くの人に、最初の1章だけでも読んで楽になってもらえたら」と話している。