DeNAが戦力外となった3選手を獲得した理由 河原隆一プロスカウティングディレクターが語る判断基準
「誰を獲得するかはもちろんなのですが、ウチから誰を出すのかは難しい判断になります。この選手は環境を変えてあげたほうがいいのかもしれない、と。それに現役ドラフトはルールが複雑で、各球団の判断もあって、どの選手を獲れるのかは本当に読めないので、しっかり情報を集めて臨むことになります」 磨けば光る素材、あるいは実績があり再び力を発揮してくれるのではないかと思わせる存在。ここはプロスカウトとして眼力を試される場面だ。河原氏は、「現役ドラフトは難しい」と語ったが、この制度自体をどのように見ているのだろうか。 「すごくいいシステムだと思っています。正直なところファーム慣れしてしまって、チャンスはもうないかもしれない、と考えている選手は少なからずいますし、新たな環境でチャンスがあるのであれば、それは大きなモチベーションになるはずです。これは私個人の意見ですが、トレードに関してももっと活発にしていければいいと思っているんです。とくに同一リーグのトレードは躊躇される傾向にありますが、新たな球団で活躍してくれたらそれでいいんだって考え方になっていってもらえたらなと考えているんです」 河原氏は、若干強い口調で続けた。 「だって、まだまだいい選手はいっぱいいますからね」 毎年、100人前後のアマチュア選手がドラフトを経てプロになるが、一方でほぼ同数の選手がこの世界を去っていく。そのなかには実力を示すことなく辞めていく者もいる。ある意味、プロスカウトはそういった選手たちの最後の砦でもある。 「大事なことは、言うまでもなくチーム力をアップさせることです。補強ポイントをしっかりと精査しつつ、何度も言いますが、環境を変えれば輝くことのできる選手を今後もしっかりと調査していきたいと思います。トレードやFA、自由契約になりそうな選手や現役ドラフトに向け、これからも情報をアップデートしていけたらと」 26年ぶりの日本一を目指すDeNAに、今後どのような新たな戦力が加わるのかその動向に注目したい。 後編につづく>> 河原隆一(かわはら・りゅういち)/1971年8月10日、神奈川県生まれ。横浜商、関東学院大を経て、93年のドラフトで大洋(現・DeNA)を逆指名して1位で入団。プロ入り後は制球力に苦しみ、サイドスローに転向するなど試行錯誤を繰り返したが、2004年に現役を引退。引退後は横浜の球団職員に転身し、スカウトとして活躍。24年からはプロスカウティングディレクターに就任した。
石塚隆●文 text by Ishizuka Takashi