【この冬、佐渡へ旅したい】佐渡は本格フレンチの宝庫!地産地消の絶品グルメを味わって
「太古から人間は火を焚き、自然からのギフトを変容させて食してきた。その原始的な視点を取り戻し、直火が宿るこの空間で、料理を通し佐渡に暮らす人々と心地よい関係性を積み重ねたい」というジルさんの思いを、妻の朋さんが代弁。 森から薪を切り出し2年もの年月を費やして乾燥させ、その薪をくべた窯は600℃に達したのちに、2日かけて緩やかなカーブを描き200°Cまで下がる。「ピザを焼くときは350~400℃、もう少し下がるとパン・ド・カンパーニュを」というように、ジルさんは熱の塩梅に合わせて最適な一皿を紡ぎ出す。ここでは現代人の歩幅とは異なる、深淵な時間の流れのなかで食を巡る風景が繰り広げられているのだ。
オープンから1年を迎えたこの秋、「LA PAGODE」では新たなプロジェクトが幕開けた。佐渡の素材を活かした5つのプロダクトが誕生したのだ。 ラボが最も大切にしている「森」と「火」を冠した2種類のフレーバーオイル、「月」や「魔法」というドラマティックな味覚の旅を誘う2種類のマスタード、そして「食べることを作るという愛」という詩的なフレーズをネーミングした苺のマーマレード。 苺は、地元の酒造会社「北雪酒造」がリキュールで使用した廃棄食材を、バジルと合わせて再加熱したもの。地域の循環や自然環境に貢献したいというラボの思いを、佐渡から地方へ、さらには世界へと届ける第一歩を踏み出した。
帰り際、ジルさんがつまみ食いさせてくれたのは翌朝のために仕込みをしていた天然酵母の薪窯仕上げのクロワッサン。直火の余熱が染めたムラのある焦げ色や口いっぱいに広がるバターの香りが、霧雨に煙る午後の静けさの中で幸せの余韻となった。
「LA PAGODE(ラ パゴット)」 住所:新潟県佐渡市阿仏坊18-1 電話:080-6551-5033 公式インスタグラム https://www.instagram.com/la_pagode_2022/ BY TAKAKO KABASAWA 樺澤貴子(かばさわ・たかこ) クリエイティブディレクター。女性誌や書籍の執筆・編集を中心に、企業のコンセプトワークや、日本の手仕事を礎とした商品企画なども手掛ける。5年前にミラノの朝市で見つけた白シャツを今も愛用(写真)。旅先で美しいデザインや、美味しいモノを発見することに情熱を注ぐ。