手拍子応援、ノリノリ甲子園 応援曲イメージ、きっかけは奈良独自大会 交流試合
2020年甲子園高校野球交流試合は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で例年の甲子園とは異なり、吹奏楽部など鳴り物を使った応援が禁止されている。スタンドの控え部員や保護者らは、応援歌のリズムに合わせた手拍子をしたり、相手に背中を押されて手拍子を始めたりと、自然な感情から出るそれぞれの応援スタイルで選手を後押しした。 【写真特集】特別な夏・智弁和歌山vs尽誠学園 第2日第1試合の天理(奈良)―広島新庄戦。天理側のスタンドからオリジナルの応援曲「ワッショイ」をイメージした手拍子が響く。当初、手拍子応援をする予定はなかったが、野球部OBで逸見顕太郎選手(3年)の父顕成さん(44)が試合当日に発案し、球場に入る前に保護者らに伝えた。 ◇「異様な応援」を一変 きっかけは全国高校野球選手権地方大会に代わる独自大会、奈良の決勝戦だった。相手の奈良大付の保護者らがうちわを手に、数人が小声で応援歌をささやくのに合わせ、みんなで拍子を取っていたのだ。反対側のスタンドでその応援を聞いていた顕成さんは「交流試合で僕たちも何かできないかな」と考え、得点圏に走者が進むと音頭を取り、グラウンドの選手を盛り上げた。「飛沫(ひまつ)を防ぐために声は出さず、なおかつ相手を威圧せず、気持ちが伝わるよう手をたたいた」と配慮しながらの即興応援に、「ちょっとリズムが速くなってしまったかもしれないが、一生懸命できた」と充実した様子で話した。 交流試合でスタンドから手拍子の応援が始まったのは第1日の第2試合に登場した鳥取城北から。相手の明徳義塾(高知)の応援団は、その応援に背中を押された。鳥取城北が逆転の4点を奪った八回表の攻撃で手拍子によって選手を鼓舞したのを見て、その裏の明徳義塾の攻撃で応援団が手拍子を始め、2点を返して1点差に迫った。1番・中堅手で先発出場した奥野翔琉(かける)選手(3年)の母里美さん(41)は「相手が手拍手をし始めて『これで応援できる』と後押しになった」という。戦況を見つめながら「声も出せず、戸惑いもあり、異様だった」と歯がゆさを抱えていたが、八回から手拍子応援ができ、「スタンドも一体になれた。新鮮で今までにない甲子園だった」と話す。 ◇磐城前校長も無意識に… 選抜大会に21世紀枠で出場が決まっていた磐城(福島)は前校長の無意識の動きが一体感を作り出したという。市毛芳幸保護者会長によると、六回表、磐城の攻撃は得点圏で1本出たら同点の場面。阿部武彦前校長が拍手で応援し始め、ならうように自然と保護者へと広がったという。阿部前校長は「意図的にやった覚えはない。無意識に手をたたいていたと思うが、結果的に選手の後押しになったならうれしい」と笑っていた。この回、磐城は追いついた。【小宅洋介、北村栞、磯貝映奈】