激辛チップスで少年が死亡との主張も、辛さ度だけで語れないトウガラシの複雑な真実
激辛化が進む一方、米国で市販のハラペーニョは大きさが2倍でマイルドに、何が起こっている?
トウガラシはとても刺激的だ。顔や耳が赤くなったり、息が荒くなったり、涙や汗が流れたり、時にはののしり言葉が出てきたり。もともとトウガラシは話題になるが、それにしても、ここ数年は爆発的に存在感を増している。 【動画】サボテンを食べまくるラクダ、なぜ平気? 例えば、シラチャーソースは2022年、厳しい気候条件が原因で店頭から姿を消したが、2024年も同じ理由で品薄になるかもしれない。2023年には、世界で最も辛いトウガラシ2種を使用したトルティーヤチップスが「念のため」に店頭から撤去された。ちなみに、このトルティーヤチップスを食べた後に14歳の息子が死亡した、と家族は主張している。 陰謀論者は1年ほど前から、現在のトウガラシはわざと辛くないように栽培されているという噂を広め、パニックをあおっている。それに対して、ギリギリ食べられる辛さのトウガラシを栽培することで、トウガラシの「弱体化」に反発する農家も現れている。 また、有名人が激辛ソースで味付けされたチキンウィングを食べる「Hot Ones(ホット・ワンズ)」のようなインターネットシリーズが人気を博している。「ホット」スナックはその種類を増やし、「シナモン・トースト・クランチ」の激辛バージョン「シナフエゴ・トースト・クランチ」や2023年まで世界一辛いとしてギネス世界記録に認定されていたトウガラシ「キャロライナ・リーパー」のチョコがけなどが登場している。 辛くないトウガラシが好きか、それとも、辛さの限界に挑戦するトウガラシが好きかにかかわらず、好奇心旺盛な美食家にとって、中間がどんどん減っているようだ。マイルド、もしくは命の危険を伴う激辛だけになってしまうのだろうか? そして、私たちは主に112年の歴史を持つスコヴィル値でトウガラシの辛さを知るが、この測定方法は果たして正確なのだろうか?
辛さか、風味か
「二極化が進んでいることは否定できません」と語るのは、トウガラシ加工品を扱う米セイボリー・アクセントを経営するトウガラシ農家のテッド・バルウェグ氏だ。バルウェグ氏によれば、辛さより風味を好む人とトウガラシの辛さの限界に挑戦する人の2派に分かれている。 スーパーマーケットで売っているトウガラシが辛くなくなっていることに気付いたという場合、そこには何か別の要因があるかもしれない。「トウガラシ法王」の異名を持つ食の歴史家で小説家でもあるデイビッド・デウィット氏が指摘するように、理由のひとつは単純に利益だ。 「一般的に、トウガラシは大きいほどマイルドになります」とデウィット氏は話す。「ハラペーニョは長さ7.5センチメートル程度でしたが、最近は15センチメートルくらいになりつつあります。1ポンド(約450グラム)単位で金額が決まるため、農家は大きなトウガラシになるように品種改良しています。大きなトウガラシのほうが重い分、報酬も増えるのです」 米金融大手のウェルズ・ファーゴ農業食品部門のマネジャーを務めるブラッド・ルービン氏も、トウガラシが大きくなり、風味が弱くなっていることを認めている。辛さが落ち着いているトウガラシのほうが店頭でよく売れるためだ。 ただし、デウィット氏は、「シラチャーソース(ごく一般的なトウガラシの品種であるセラーノを使用)のような商品が以前より辛くなくなった例は知らない」と述べている。