横須賀・法塔ベーカリーが創業100周年 全国グランプリの海軍カレーパン
横須賀市のパン製造・販売の老舗「法塔ベーカリー」(同市久里浜)が今年、創業100周年を迎えた。移り変わる時代とともに市民にパンを提供してきた誇りを守る。見据えるのは地元の人々がパンを通じてつながり、横須賀を盛り上げていくこと。今秋4代目社長に就任した森柾人さん(47)は「次の100年へ人と人との縁を大切にし、日常の中で食べ続けてもらえるパンを作りたい」と決意を新たにしている。 【写真で見る】創業100周年の祝賀会、森柾人新社長から父の森勇人前社長へ花束が贈られた 同社は関東大震災が発生した翌年の1924年に創業。宮崎県出身の初代・森末蔵氏が現在の同市佐野町・衣笠栄町周辺の法塔地区に開業したことが店名の由来だ。昨年10月には久里浜に新工場を設立し、職人の人手不足なども見据え、機械化も推し進める。直売店には日々、出来たてのパンを求めて市民が訪れている。今年11月8日には市内ホテルで100周年の祝賀会が開かれ、上地克明市長ら約270人が盛大に祝福した。 同社は時代の変化に合わせてパンを作り続けてきたが、歩みは順風満帆ではなかった。末蔵氏は旧日本海軍や陸軍を主な取引先として販路を拡大。2代目の森守氏は、戦後の学校給食の普及に伴い、1日に1万2千食のパンを製造する規模へと発展させた。 ただ70年代に国の制度で米食が給食に導入され、パン食は衰退傾向に。その影響もあり、3代目の森勇人前社長(74)は給食事業から撤退を決断し、小売り中心へシフトした。89年にベーカリーレストランの開店といった新たな挑戦もしたが、売り上げは伸び悩んだ。家業を継ぐために2003年に入社した森社長は「子どもの頃から継ぐと思っていたが、『どうなっているんだ?』という財務状況だった」と当時の苦境を振り返る。 転機となったのが10年の「第1回日本全国ご当地パン祭り」。現在も看板商品の「よこすか海軍カレーパン」がグランプリを受賞した。打開策を見つけるために必死だった森社長が横須賀商工会議所に駆け込み、「カレーの街よこすか事業者部会」で地域活性化に熱量を持つ人々とつながったことで生まれた商品だった。「外に飛び出したからこそ多様な考えを取り入れられた。本当に人に恵まれた」と縁に感謝する。
神奈川新聞社