「息子の前で無様な姿を見せられない」“越後の虎” 空手の元世界王者・岩木秀之さん(53) “総合系空手”で挑む最後の大会へ
「この関節ってこっちに曲がる関節ですよね。これをここにぐーっと押し込んで、逆に折ってしまうという恐ろしい技なんですけど。これが空手界では禁止技なんですね。選手生命に関わる。でも、今回出る大会がこれがありなんですよ」 「一生練習することないと思っていたんですけど、今回やらなければいけないので…」 危険をともなう、人生をかけた大一番に向け日々練習に取り組む岩木さん。 練習後に一息つくのが、ジークンドーの指導者・宇佐美信広さん(56)が営むバーです。お酒が飲めない岩木さん、のどを潤すのはビタミンなどが含まれるノンアルコールカクテルだそうで… 「この一杯のために練習を頑張るっていう」 53歳で新たな挑戦をする岩木さん。長年酷使した体は、すでに悲鳴をあげています。そんな岩木さんの挑戦に、同世代の宇佐美さんはエールを送ります。 宇佐美信広さん(56) 「岩木先生は、我々の世代からすると一時代を築いた新潟の名選手なので、けがをせず、風邪を引かず、当日元気な状態で試合に臨んでいただきたい」 そして、もう一人。岩木さんの背中を押すのは、息子の烈生(れお)さん(18)です。 岩木烈生さん(18) 「この年になって、ちゃんとしっかり自分の父親の勇姿を見届けられるのは、なかなか他の同じ子たちが体験できないことなのかなと思うと、すごく嬉しいですね」 烈生さんは世界大会で「セコンド」を務めます。10月に前哨戦として初めて父親のセコンドにつきました。 岩木さんの息子・烈生さん(18) 「セコンドまで不安だったら、選手はもっと不安になるじゃないですか。試合中の時だけは頑張ってこらえていたんですけど、試合終わった瞬間涙が出てきちゃって…」 憧れであり、超えられない高い壁でもある父の存在― 一番の師匠の最後の挑戦を、この目に焼き付けたいと話します。 53歳となった“越後の虎”が息子と二人三脚で挑む最後の挑戦。 夢源会 代表師範・岩木秀之さん(53) 「本当を言うと、一番格好悪いところを見せたくない息子をあえて連れてきて、自分にとっても最後の試合だし、息子の前で無様な姿を見せられないっていう『背水の陣』で最後の挑戦を頑張りたいと思います」
岩木さんが出場するのは、35歳以上・73キロ以下の部門で、イタリアやスペイン、ウクライナなど世界各国の強者が集まります。 最後は笑顔で終われるように… 集大成の国際大会は12月1日、東京で開催されます。
新潟放送