340万再生されたUSGAのルール解説動画とは!? 決して“ズル”じゃないお得な救済方法に目からウロコ
2023年の「アーノルド・パーマー招待」でJ・スピースが同様の救済
これと似た救済処置が2023年3月のPGAツアー競技「アーノルド・パーマー招待」の第2ラウンドで行われました。 救済を受けたのは人気プレーヤーのジョーダン・スピース。スピースは18番ホールのティーショットを大きく左に引っかけてしまいました。ボールはOBの「境界物」であるフェンスのすぐ手前に止まっていました。「境界物」はルール上の「障害物」ではなく、プレーの邪魔になっても無罰の救済を受けることはできません。 そこでスピースが選択したのは左打ちでした。ところが、その場合、スタンスは手前を走るカート道路にかかってしまいます。 そのため、スピースがルールオフィシャルを呼んで、救済を求めたところ、オフィシャルはそこでの左打ちは「明らかに不合理なストロークではない」と判断。カート道路の障害が避けられる救済エリアへのドロップを認めたのです。 結果、スピースはカート道路の手前(フェアウェイ側)に「完全な救済のニヤレストポイント」を決定し、ドロップ。そして、インプレーとなったボールを、次に右打ちでストロークしたのです。 この救済についてアメリカのゴルフメディアは、「問題は、カート道路がなかったら、プレーヤーはどのようにストロークするか、ということです。その状況では、カート道路がなかったとしても、左打ちを選択するのが妥当ならば、無罰の救済を受けることができます。そして、その結果による新しい状況では、プレーヤーは適切な方法でストロークすることができます」と解説しています。
R&A発行の「規則のオフィシャルガイド」の解説
スピースのケースと酷似した例がR&A発行の「規則のオフィシャルガイド」に書かれてあります。 「16.1a(3)/1 異常なストローク方法で障害物が障害となるときにも救済を受けることができる場合がある」という項目で、そこでは、 「例えば、ジェネラルエリアで、右利きのプレーヤーの球がホールの左側の境界物の近くにあったので、そのプレーヤーはホールに向けてプレーするために左打ちのスイングを行わなければならなかった。その左打ちのスイングを行うとき、動かせない障害物がそのプレーヤーのスタンスの障害となっていた。 この状況において、左打ちのスイングを用いることは明らかに不合理ではないので、そのプレーヤーはその動かせない障害物からの救済が認められる。 その左打ちのスイングについての救済処置が終わった後で、そのプレーヤーは次のストロークで通常の右打ちのスイングを用いることができる」と解説。 さらに続けて、 「その動かせない障害物がその右打ちのスイングについて障害となる場合、そのプレーヤーは規則16.1bに基づいてその右打ちのスイングについて救済を受けることができるし、あるいはその球をあるがままにプレーすることもできる」と記されています。 つまり、左打ちで行った救済のボールは右打ちでストロークできるし、その右打ちの際に再度、カート道路が障害になるときは、改めて救済を選択することもできるというわけです。 そこまでになるケースは滅多にないでしょうけど、その前段の処置=左打ちが合理的な選択であれば、そこで発生する「障害」からは基本的に救済を受けられる、ということは頭に入れて置くと良いでしょう。
小関洋一