デュエット以外に仲睦まじいトークも披露した杉（右）と伍代＝東京・紀尾井町（撮影・土谷創造）

歌手で俳優、杉良太郎（80）が30日、東京都内で「芸能生活60年・福祉活動65年　感謝の宴」を開催した。8月14日に80歳の誕生日を迎え、主演時代劇「遠山の金さん」の主題歌「すきま風」などを熱唱した歌唱ステージでは、感極まって涙が流れる一幕も。ベトナムでの国際貢献活動や被災地支援にも尽力し、船越英一郎（64）ら約500人の出席者から半世紀以上の活動に拍手が送られた。 米大リーグではドジャースの大谷翔平投手（30）が54本塁打、59盗塁で「54－59」を達成。国内では〝名裁き〟で弱者を救う遠山の金さん役で知られる名優が「60－65」に到達した。 芸能活動は1965年の歌手デビューから60年。冒頭でミリオンヒットの「すきま風」を披露すると、「歌には皆さん、人生やそれぞれの思いを乗せていると思う」と歌の神髄に言及した。 福祉活動は15歳の時、地元の神戸で通っていた歌謡学校で刑務所などを慰問してから65年。私財も投入して阪神・淡路大震災や東日本大震災、能登半島地震などで支援活動を展開し、「被災者から『神様に祈ったが、助けてくれなかった』という声をよく聞く」という体験を基に制作した「神様への手紙」を歌い上げた。ほかには今年1月、48年ぶりに有線演歌歌謡曲リクエストランキングで1位を獲得した「花のふるさと」など6曲を熱唱した。 自身の思いと人生も乗せた選曲となり、同曲の歌唱中にはほおに一筋の涙。結婚25周年の妻で歌手、伍代夏子（62）も出演し、デュエット曲「angel－天使をみつけた」を歌唱した。 現在は法務省特別矯正監、警察庁特別防犯対策監、厚労省特別健康対策監に永久委嘱され、特殊詐欺撲滅や健康行政推進の事業などに尽力。過去に特別大使を務めたベトナムを中心に国際貢献活動も継続中で、2016年には文化功労者に選出された。 多忙の中、移動の車中でも歌の練習をするなど色あせない〝歌心〟も原動力。俳優業では15、18年のTBS系「下町ロケット」など現代劇でも存在感を発揮するが、祝賀ムードの中、杉は最後に「私は御曹司でもなく、ボウフラのようにわいてきた役者で、自分で芸を磨いてきた」と自負。気質は「20歳のデビューから人間関係が難しいと思う、難しい人間。建前もできず、写真も心から笑っている写真はほとんどない」と語り、その根底には世界平和への気持ちがあった。 「紛争があっても、なぜわがこととして考えないのか…そのことを叫び続けたいし、覚悟をもって杉良太郎として生きていきます」。静かに語りかけると、会場は拍手に包まれた。（山内倫貴）