藤井聡太八冠が地元・愛知で24年度白星発進 昨期24勝1敗の無双先手で叡王戦第1局制す「充実感のある将棋が指せた」
将棋の第9期叡王戦五番勝負第1局が7日、名古屋市の「か茂免」で指され、4連覇を狙う先手の藤井聡太叡王(21)=竜王、名人、王位、王座、棋王、王将、棋聖との八冠=が107手で挑戦者の伊藤匠七段(21)を破って先勝した。藤井は24年度最初の対局で白星発進となった。タイトル戦連勝は1持将棋(引き分け)を挟み15に伸ばし、1位の故・大山康晴十五世名人(17連勝)超えもみえてきた。10日からは初防衛を目指す名人戦とのダブルタイトル戦となる。 最終盤、駒を進める藤井の手つきに迷いはなかった。背筋を伸ばし、体の揺れは止まっていた。向かいではうなだれる伊藤。勝利の桜は藤井が咲かせた。 「新年度の初対局を地元で迎えられることはうれしく思っていますし、終盤はかなり難しいところが多く、その点では充実感のある将棋が指せた」。地元・愛知から新年度を始めるのは初めてだった八冠は、満開の桜に似合う充実の表情を見せた。 対局開始前、すでに吉兆の兆しがあった。振り駒の結果は駒が2枚重なり、歩が2枚出て藤井の先手に。藤井は23年度先手では24勝1敗。永瀬拓矢九段との王座戦第1局しか黒星がなく、先手勝率は驚異の9割6分。無双の先手をとったことを伝えられると藤井は目をつぶったまま、小さくうなずいた。 戦型は藤井のエース戦法、角換わり。後手の伊藤が真っ向から受け、力勝負となった。昼食休憩のあたりでは「ちょっと思わしくない展開にしてしまったかな」とやや反省。昼食後、1時間11分費やして強く伊藤陣に打ち込んだ歩も「苦しい気がしたが、代わる手も主張がなくなってしまうように感じた」と手応えはあまりなかった。 形勢互角のまま終盤戦に。勝負の分岐点を聞かれ、藤井が額に手を置いて考え込んだように、攻め合いの難しい将棋となった。それでも、終盤に強い方が勝つ将棋で読み勝ったのは藤井だった。伊藤の攻めをうまく受け、自玉を安全にすると、鋭く相手玉を寄せ切った。 八冠制覇を目指して戦っていた23年8月31日の王座戦第1局(対永瀬拓矢九段)で敗れた後からタイトル戦では連勝を重ねており、本局で15勝1持将棋(引き分け)に。23年10月の全冠制覇以降、竜王、王将、棋王と無傷負けなしでの防衛を果たしてきた王者が24年度でも好調キープで好発進となった。 10日からは初防衛を目指す名人戦が東京・文京区で始まる。終局後、改めて日程を伝えられた藤井はやや上を見上げて息を吐いた後、きりりとした目つきに。「ここからは対局が続くことになるので体調に気をつけて頑張っていきたい」。新年度も八冠が全国で勝利の花を咲かせる予感がある。(瀬戸 花音)
報知新聞社