『コタツがない家』悠作の“漫画家を辞める”宣言 達男が切り出したあまりにも残酷な提案
ドラマ『コタツがない家』(日本テレビ系)第7話では、深堀家が崩壊の危機に直面する。鬼怒川の女に捨てられて、深堀家に舞い戻ってきた達男(小林薫)。熊沢(西堀亮)を介して家族と会話をする会わせる顔がない達男は、以前の横柄な態度はどこへやら、万里江(小池栄子)や悠作(吉岡秀隆)だけでなく、あの犬猿の仲だった悠作(吉岡秀隆)にまで敬語。これまでとは立場が逆転したその光景はまるで主人と下僕のようだ。 【写真】達男(小林薫)と話す悠作(吉岡秀隆) 週タイトルは「下僕の逆襲」。いつかその我慢の限界が訪れるものだとは予想していたが、まさか達男から悠作への「娘と離婚してやってくれないか」という言葉になるとは思いもしなかった。 きっかけは、悠作の漫画家を辞めるという宣言。11年半という長きにわたって新作を描いてこなかった悠作を見捨てずに手を伸ばしてきたのは、土門(北村一輝)と万里江だった。しかし、恩を仇で返すような言葉でその手を払い退けてしまう悠作。いつもの飄々とした調子で「辞めることに一片の悔いなし!」とラオウ(『北斗の拳』)の名言を引用する悠作を見ていられなかったのは達男だ。 逆襲の舞台となる店は万里江が悠作のことで達男を説得した焼鳥屋。まさか同じ店で離婚を切り出されることになるなんて。下僕としてずっと下手に出ていた達男が、いつの間にか元の達男に戻っている。けれど、あからさまに怒りを滲ませているわけではなく、至って冷静。真剣だからこそ、悠作はその異様さに途中で気づき、自分が取り返しのつかないところにいることにゆっくりと気づいていく。 「あいつは人のいいところを見つけて、愛情を注ぐ才能がある」と話す達男から伝わってくるのは、娘である万里江への愛情。鬼怒川のスナックでもその一面は垣間見えていた。相も変わらず娘に世話になりっぱなしの父を、見捨てずに老後までを視野に入れて一緒に暮らさないかと提案してくれた万里江。「たまには父親らしいことをしてやりたいと思って」と前置きしながら切り出される離婚の話は悠作にとってあまりにも残酷だ。 この第7話は「自由」「恩返し」「幸せ」といったセリフがキーワードになっている。それぞれの視点や捉え方によってその意味は様変わりしてくるが、悠作から離婚を切り出すことこそが万里江への罪滅ぼしであり、これまでの恩返しであると達男は悠作に諭す。 「頼りがいのある女性と結婚して自由を謳歌する」などと志織(ホラン千秋)の彼氏である康彦(中川大輔)に得意げに話し、「長い間、自由にさせてもらったからさ、これからは恩返しのつもりで家のことを精一杯頑張りますんで」と心機一転、家事を手伝うことを万里江に宣言していた悠作は、自由という言葉を履き違えている。「時間の制約がある中でたまに訪れる開放感のことを自由」だと分かっていながら。11年半という月日の経過とともに、悠作も51歳。時間の制約の中にいるのは、悠作本人ではないだろうか。達男の言葉は万里江を思ってのものだが、回り回って悠作を奮起させる特効薬でもあるのは、次回予告から明らかである。
渡辺彰浩