加藤小夏、俳優人生の転機に必ず桂正和作品 ウイングマン・アオイ役は「他の人にやってほしくない思いだった」
加藤小夏が、テレビ東京系ドラマ『ウイングマン』(毎週火曜深夜24時30分)にヒロインのアオイ役を好演中だ。「透明感あふれる宣材美女」として注目を集めてから早6年。この間、ドラマや映画など出演を重ね、2022年には『鎌倉殿の13人』でNHK大河ドラマ初出演。源実朝の正室・千世役を好演。更に今年3月にはApple制作の手塚治虫さん原作ショートフィルム『ミッドナイト』でヒロイン役を務めるなど話題作への出演が続く。『ウイングマン』は漫画家・桂正和氏の連載デビュー作の実写化。桂氏原作作品は「I"s」以来2作目となるが、加藤自身、俳優人生で窮地に立った時の救いになっている大事な作品という。それはなぜか。【取材=木村武雄/撮影=村上順一】 ――「ウイングマン」自体は知っていたんですか? 桂先生の作品ですし、展示会とかにも観に行ってたので知っていました。 ――実際にその話を受け取った時はどんな心境だったんですか? 私に合うんじゃないかなって思いました(笑)。他の人にやってほしくないなというのと、私自身これまで戦隊ものってやったことがないんです。この仕事をやっているなら絶対一度はやってみたいと思っていたのでいいタイミングでしたし、「これはやるしかないでしょう」っていう感じでした(笑)。 ――アクション作品では、いい流れですよね。 そうですよね。『取り立て屋ハニーズ』、そして今年の『ミッドナイト』と続いて、ありがたいです。観て選んでいただいているのか分からないですけど、アクションは好きですしやっていても楽しいですし。 ――ダンスやっているからキレもいいし。 そっかっ!忘れてた、ダンス(笑)私より知っているじゃないですか(笑) ――(笑)作品を知ってたとはいえ、役に落とし込んでいくのは大変だと思うんですが、その辺はどうやりましたか? 現場ではあまり言われなかったんですけど、桂先生が一番最初に原作を忘れてやってほしいとおっしゃって。かわいいだけのアオイじゃなくて、ドリムノートを大事にしているところとか、お父さんやポドリムス(アオイがいる異次元世界)を救いたいとかそういうことを大切にしてほしいというふうに言われたのでそれを大切にしようと思ってずっとやっていました。 ――『I”s』のときはどうだったんですか。 『I”s』は全員原作どおり忠実に言葉も前髪の分け目も衣装も、あの時着ていたものと同じものでという感じでした。ちょっとちがいますね、『I”s』の時とは。 ――プロデューサーさんもコメントされていましたが、加藤さんがアオイに一致していたって。 そうだと嬉しいです。あとは(藤岡)真威人くんとのコンビがいい感じだったのかなって思っています。年齢は私の方が上で、健太の一生懸命な感じが真威人くんそのままで。現場で私が真威人くんを見る目線も見守っている感じでしたし、アオイとしても健太をいろんな面で見守っていたり幸せでいたらいいなと思っていることも似ていたから現場がいい感じだったのかなと思います。 ――お相手が年下ははじめてですか。 あそこまで離れている(約5歳差)のは初めてです。最初は戸惑いました。現場も学生チームはみんな私より下でしたから。私は妹気質なのでどう接したらいいんだろうってすごく考えました。でも真威人くんは女の子の兄妹がいるからか接しやすかったです。今まで先輩に引っ張ってもらうことが多かったので、現場のスケジュールがいっぱいいっぱいで真威人くんも大変だっただろうから、大丈夫かなって見守っていました。 ――自分のことも考えなきゃいけないけど相手のことも考えるのは大変ですね。 自分のことで大変だったこともありますが、今までいろんな先輩にそういうふうにしてきてもらったので、それが当たり前だと思いますし、大変って感じじゃなかったです。 ――役者としてはひとつの転機ですかね。 転機だと思います。自らやりたいって言って決まったお仕事も初めてですし、どうしたら現場が楽しくなるかとかみんなが気持ちよく過ごせるかとかを考えていました。自分も大事だけど、自分のことよりもそういうところを思って臨んだのは初めてだったかもしれないです。 ――『コーヒーはホワイトで』はわきあいあいと笑い転げていましたよね。 本当に笑い転げているだけでした(笑)主演だからということもなく、みんな友達みたいな感じで特に好井(まさお)さんがふざけていました。引っ張ってくれる人がいたからありがたかったです。 ――『ウイングマン』ですが、撮影の向けての準備はどうでしたか。 時間がタイトで、アオイはウィッグにするかどうかも結構ギリギリまで決まらなくてずっとそわそわしていました。台本ができるものギリギリで、原作も忘れてと言われたのでそれを言われてからは一度も見なかったですし。とにかく桂先生が大切にしてほしいということを大切にするしかないなと考えていました。でも「健太」と呼ぶ練習はずっとしていました。私結構多いんですよ。役決まったら相手役の名前をずっと言ってたりとか、登場人物の名前を言ってたり(笑)やっぱり呼び慣れてないとって思います。だから1年前の『さらば、佳き日』でもクランクイン前に「アキ、アキ」(親友・珠希の親友の晃/演・山下美月)って言ってたり。慣らしておきたいんです。呼んでると生活の中でもその人のことを忘れないので。 ――演じるのが楽しいと思ったって言ってたのはいつでしたっけ。 『君たちはまだ長いトンネルの中』くらいかもしれないです。 ――今は役者として「楽しい」が続いている感じですか。 一回沈んだタイミングがあったんです。去年の年末に。「もう無理だ!」って。その時に辞めるつもりでした。でも、続けてみて現場入ってやっぱりお芝居は楽しいって改めて思ったときに桂先生のお話が来て。『I”s』のオーディションの時もこれに落ちたら辞めようと思っていたんですよ。大学進学のタイミングだったし。でも『I”s』が受かって今回『ウイングマン』が決まってすごいタイミングだなと思って。自分が沈んでるときに必ず桂先生の作品があるんです。今は数年前よりも仕事楽しいっていうモチベーションが上がっているかもしれないです。 ――『ミッドナイト』はその前ですか。 そうですね。10月とか。 ――でも『ミッドナイト』は手ごたえはありましたよね。 手ごたえはありましたけど。本当に別人ってぐらい沈んじゃいました。11月12月くらいが一番沈んでてもう無理かもって。 ――加藤さんは自分のペースで着実に階段上っているイメージがあったので。こんなふうに思うんだってびっくりしました。今回の作品で改めて気付けて良かったですね。 続けてるとこんなにいいことがあるんだってこんなに早く気付けて良かったです。 ――最後に、『ウイングマン』の隠れ見どころは? 撮影がめちゃくちゃ暑い時期だったんですよ。岩船山(栃木県)かな?崖みたいなシーンでパーム爆破を撮るときがあったんですけど、めちゃくちゃ暑い日で40℃近くて。美紅ちゃん役の菊地姫奈さんと地面に手をつくところがあったんですけど、照り返しも強いしレフ版も当てられてるし上から直射日光当たってるし本当に2人とも死にそうだったんです。だからよく見たら2人とも目がトロトロかもしれません。あと、アオイのコスチュームの時のブーツがあるんですけど裏起毛なんです。だから40度近い中あれを履いて脱ぐとブーツの中が汗びっしょりなんですよ(笑)。それが隠れ見どころです!脱ぐの大変で、引っ付いちゃって脱げないの(笑) (おわり)