【Playback箱根駅伝】第85回/東洋大 初の総合優勝! 5区・ルーキー柏原が4分58秒差を大逆転
2024年に箱根駅伝は第100回大会を迎える。記念すべき100回に向けて、これまでの歴史を改めて振り返る『Playback箱根駅伝』を企画。第1回大会から第99回大会まで、大会の様子を刻んでいく。(所属などは当時のもの) 第85回箱根駅伝総合成績をチェック
第85回(2009年/平成21年) 2区でモグスが2年連続区間新 上武大初出場、青学大は33年ぶりの箱根路
前年の大会で関東学連選抜が4位に入ったため、シード枠は例年より1つ少ない「9」。それに加え、5年おきの記念大会ということで、史上最多23チームが大手町のスタートラインに立った。 10月の予選会では3年連続で本戦11位だった城西大がトップ通過を果たし、上武大が初出場を決めた。そのほかにも青学大が33年ぶり、拓大が4年ぶり、明大が2年ぶりに箱根路へ返り咲いた。 全日本で3連覇を飾った前回王者の駒大、全日本2~4位の早大、山梨学大、東洋大が優勝候補に挙げられ、特に東洋大は出場67回目にして初優勝が狙える戦力が整っていた。 1区は前年同様にスローな展開となり、終盤に抜け出した早大のルーキー・矢澤曜が区間賞を獲得。2位以下も秒差でなだれ込み、先頭から20秒以内に9チームがタスキをつなぐ混戦へ。優勝候補の駒大はまさかの19位発進となった。 2区では前回大会で区間新記録を樹立した山梨学大のメクボ・ジョブ・モグス(4年)がまたもや爆走を見せた。4位スタートからあっという間に先頭を奪うと、自身の持つ区間記録を19秒更新する1時間6分04秒で2位以下に2分40秒もの大差をつけた。2位は留学生のギタウ・ダニエル(3年)が史上最多の20人抜きを達成した日大が入り、東洋大はこの時点で14位と出遅れた。この区間ではダニエルのほかに多くのごぼう抜きが見られ、中央学大の木原真佐人(4年)が11位から8人抜き、中大の徳地悠一(4年)が13位から8人抜き、東農大の外丸和輝(3年)が14位から10人抜き、駒大の宇賀地強(3年)が19位から11人を抜いた。 3区では山梨学大が首位をキープしたものの、6位でタスキを受けた早大の竹澤健介(4年)が2位まで浮上し、その差を16秒まで縮めてきた。竹澤は北京五輪5000m、10000m代表のスピードを生かし、3区では初の1時間2分切りとなる1時間1分40秒の区間新記録を樹立した。駒大はこの区間で17位まで順位を落とし、連覇へ黄色信号が灯った。 4区では早大のルーキー・三田裕介が区間新の快走で山梨学大を逆転し、首位に浮上。早大が往路の小田原中継所でトップに立つのは11年ぶりだった。3位以下は大きく順位が入れ替わり、明大が10位から3位へ、日体大が8位から4位へ、帝京大が12位から5位へジャンプアップを果たした。 5区では山梨学大の高瀬無量(2年)がハイペースで早大の三輪真之(4年)に追いつくが、徐々に失速。その後ろで9位スタートだった東洋大の1年生・柏原竜二が猛烈な勢いで迫ってきた。柏原は区間新ペースで山を駆け上がり、19km過ぎで首位へ浮上。「山の神」と呼ばれた今井正人(順大)の持つ区間記録を47秒も更新する1時間17分18秒のスーパー区間新で、東洋大初となる往路優勝のフィニッシュテープを切った。 2位は早大、3位は日体大が続き、前回王者の駒大は先頭から約8分遅れの15位と優勝争いから完全に脱落した。 復路のスタートとなる6区では22秒差で追いかける2位・早大の加藤創大(3年)が東洋大を逆転し、再び首位へ。しかし、東洋大も18秒差で続き、ここから一騎打ちのバトルが続く。 7区では早大の八木勇樹(1年)が東洋大の飛坂篤恭(4年)を一時1分近く引き離したものの、後半に盛り返した飛坂が区間賞を獲得。順位は変わらなかったが、その差を12秒まで縮めた。 そして勝負を決した8区。東洋大の千葉優(2年)が8km手前で早大の中島賢士(2年)に追いつくと、16km付近にある遊行寺で引き離しにかかり、戸塚中継所では45秒の差をつけた。東洋大はその後も9区の大津翔吾(2年)が区間2位、10区の高見諒(2年)が区間6位と安定感のあるタスキリレーで後続を寄せ付けず、往路・復路をともに制する完全優勝で悲願の総合初制覇を成し遂げた。 早大は2年連続で2位となり、日体大が4年ぶりのトップ3。大東大が予選会10位通過から大躍進の4位に入り、以下は中央学大、山梨学大、日大が5位~7位と続いた。明大は8位で43年ぶりとなるシード権を獲得。9位は関東学連選抜が入り、名門・中大が苦戦しながらも10位で連続シードを「25」に伸ばした。 優勝候補の駒大は13位でまさかのシード陥落。予選会1位通過の城西大は8区で途中棄権のアクシデントがありながら、9区の主将・伊藤一行(4年)が区間トップだった山梨学大・中川剛(3年)のタイムを28秒上回る「幻の区間賞」で見せ場を作った。 大会MVPは5区で驚異的な区間新を叩き出した柏原が受賞。東洋大は5区の柏原を中心に6人が1、2年生という布陣で、これから訪れる「黄金時代」を予感させる戦いぶりだった。 参考文献:箱根駅伝90回記念誌(関東学生連盟)
月陸編集部