「トークン化」に乗り遅れないために──必要なのは、コラボレーションと想像力
トークン化は取引の処理方法に革命をもたらす可能性がある。しかし、機関投資家にとって最大の可能性は、デジタル資産そのものにある、と米金融市場で証券の中央管理を担い、米金融市場の「心臓部」とも言われるDTCC(Depository Trust & Clearing Corporation)のデジタル資産部門グローバル責任者、ナディーン・チャカー(Nadine Chakar)氏は述べる。 1月にアメリカで初めてビットコインETFが承認されたことは、伝統的資産とデジタル資産の融合にとって重大な転機となった。投資家は初めて、いつも使っている証券口座を通じてビットコイン(BTC)に投資できるようになった。 ビットコインを支える中核テクノロジーである暗号化テクノロジーは新しいものではないが、トークン化(トークナイゼーション)を支えるブロックチェーンとスマートコントラクトテクノロジーによって再び注目を集めている。 トークンとは、ブロックチェーン上で譲渡、保管、取引が可能な価値の単位であり、暗号資産(仮想通貨)の所有権だけでなく、株式や不動産、あるいは美術品などの現実世界の資産(現実資産、Real World Assets:RWA)など、さまざまな種類の資産をデジタルで表現したものだ。 米証券取引委員会(SEC)がビットコインETFを承認したことで、暗号化テクノロジーの正当性が高まったという見方もあり、現在では、トークン化の多くのメリットを探求する企業や個人投資家が増えている。
トークン化のメリット
トークン化によって、企業は資本効率を高め、新たなビジネスモデルを構築し、提供する商品や販売経路をより容易に拡大することができる。企業は新たな効率性を解き放ち、既存のプロセスを合理化する方法を発見しながら、新たな市場や流動性を解き放つ方法を見つけることができる。しかも、それらをより安価、かつスピーディーに実現できる可能性が高い。 同時にトークン化は、取引の処理方法を一変させる可能性がある。例えば、証券貸付。トークン化を利用すれば、担保をリアルタイムでやり取りできるようになり、企業は既存のプロセスのリスクを低減できる。 また、スマートコントラクト(特定の条件が満たされたときに自動的に実行される取引)を使って証券貸付プールを管理することで、トークンにコンプライアンスを組み込んで効率化を図り、世界中にトレーディングデスクのネットワークを構築する必要もなく、24時間365日の取引を可能にすることができる。 しかも、こうしたメリットは氷山の一角にすぎない。ブロックチェーンテクノロジーの真の可能性は、資産そのものにある。 現在の資産の在り方を考えてみよう。資産の価格設定、利子や配当の分配、投資家とのコミュニケーションといった重要なプロセスを実行するためにはさまざまなシステムが必要だ。トークン化すれば、これらのプロセスを資産そのものに組み込むことができる。 トークン化された資産が、それ自体で自動化されたプロセスを実行できることを考えると、舞台裏で働く何十ものシステムが不要になるかもしれない。