津田学園、決定打欠く エースの力投実らず /三重
<2019 第91回センバツ高校野球> 第91回選抜高校野球大会第3日の25日、津田学園は1回戦で龍谷大平安(京都)と対戦し、延長戦の末、0-2で敗れた。17年ぶり3回目のセンバツで、優勝を目標に挑んだ選手たちだったが、自慢の打線は制球力の良い相手投手を攻略できずに沈黙。延長十一回に決勝点を許した。最後まで全力で戦い抜いた選手たちに、一塁側アルプスからは大きな声援と拍手が送られた。【谷口豪、塚本恒】 【熱闘センバツ全31試合の写真特集】 ……………………………………………………………………………………………………… ▽1回戦 龍谷大平安 00000000002=2 00000000000=0 津田学園(延長十一回) 両主戦がスコアボードにゼロを重ね、息詰まる投手戦となった。 前佑囲斗投手(3年)が初回を3者凡退に抑えると、プレーボール当初は緊張していた母千鶴さん(47)の表情が緩んだ。「調子は良さそうなので、最後まで全力で投げてほしい」とほほ笑んだ。 初めてのピンチは四回表。四死球などから1死二、三塁となると「頑張れ」の声が飛ぶ。ここで前投手は直球主体の気迫の投球で2三振を奪うと、スタンドから大きな拍手が送られた。兄恵弥さん(19)は「練習でも何度もこうした場面は経験しているので、抑えてくれると信じていた」と目を細めた。 龍谷大平安の左腕・野沢秀伍投手(3年)のコーナーを突く投球に抑えられていた津田学園は五回裏、チーム初安打を放った小林世直選手(2年)が打席に。「打線がなかなかつながらなかったので自分が引っ張っていこう」と変化球にうまくバットを合わせ、右前に運び、連続安打。「タイミングを外されたが、体重を球に乗せて打てた」と振り返る。 母知子さん(46)は「打てるよう心の中で祈っていたので良かった」と安堵(あんど)の表情。小林選手はこの日3安打と気を吐いた。 直球の威力で押す前投手、丁寧な制球を続ける野沢投手ともに譲らず、0-0のまま延長戦に。スタンドから「これからだ」と声が飛んだ。スタンドで応援する野球部の深尾最斗(たかと)選手(3年)は、「チャンスは絶対に来るので、自分たちを信じて頑張ってほしい」と祈るような表情。 十一回表、投球数が130球を超え、前投手の表情に疲れの色が。「佑囲斗、大丈夫だぞ」とアルプスからの声援のボルテージはさらに上がる。しかし、1死一、二塁から適時打、犠飛と2点を奪われる。その裏、津田学園は好機を作れずに試合終了となった。 うなだれながらスタンドに一礼する選手たち。野球部の広田拓也副部長は「良い試合をしたが、粘り強さや経験が足りなかった」と悔やんだが、「今回の反省を生かして、次の夏につなげたい」と誓っていた。 ◇中学2校も演奏 ○…グラウンドの選手たちを鼓舞しようと一塁側アルプススタンドでは約150人でつくるブラスバンドが力強い演奏を響かせた。津田学園の吹奏楽部員は15人だが、加えて中学2校から130人以上が応援参加。攻撃時にはテンポの良い応援曲で盛り上げた。甲子園で演奏するために津田学園に入学したという井植朋香さん(2年)は「自分たちの奏でる音が選手たちの力になれば」と笑顔で語った。 ……………………………………………………………………………………………………… ■熱球譜 ◇強気の直球勝負 津田学園3年・前佑囲斗投手 両チーム無得点のまま迎えた十一回1死一、二塁。タイムを取った阿万田琉希捕手(3年)に「お前しかいないから自信を持って投げろ」と激励された。「併殺にこだわらず、一つずつアウトを取ろう」と投げた球は甘く入り、打球は左翼手の頭上を越える適時打に。「まだ甘いところがある」と唇をかんだ。 立ち上がりから緊張感はあったが「いい気分で投げられた」。打たせて取る投球に徹し、ピンチの場面は強気の直球勝負を挑んだ。 だがチームは打線がつながらず、回が進むにつれ、疲労から肩に力が入り始めたという。六回前後から指がつり、八回を過ぎたあたりで制球が乱れ始めた。それでも「自分の一球で試合が動く」と集中力を保った。 頭にあったのは昨夏の悪夢だ。三重大会初戦で、延長十二回に登板するが、サヨナラ負け。「二度とあんな負け方はしたくない」と体を鍛え続けてきた。「直球は絶対に打たれない自信がついた」。延長戦では昨夏の嫌な記憶も頭をよぎったが、気持ちを切り替えて投げ続けた。無念の敗戦だが、力は出し尽くした。 「柱となれる選手になるために、夏に向けてトレーニングを増やす」。試合後には早くも次の目標を口にしていた。【谷口豪】 〔三重版〕