10分で読める『ガンダムSEED DESTINY』の物語<Road to 機動戦士ガンダムSEED FREEDOM>
アニメ「機動戦士ガンダムSEEDシリーズ」の完全新作の劇場作品『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』が2024年1月26日(金)より全国の劇場にて上映をスタートする。本作はシリーズ第2作目『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』から続く物語だ。前作以上に濃いヒューマンドラマで話題になった『SEED DESTINY』だが、その内容はどんなものだったのか。WEBザテレビジョン編集部ガンダム担当が、「10分で読める『SEED DESTINY』編」を届ける。 【写真】貴重! シンがレモンを持った当時の週刊ザテレビジョンの表紙 ■前作から2年後、再び始まる人類対立の戦争 『SEED DESTINY』は2004年10月から前作『機動戦士ガンダムSEED』の後番組として、TBS系列の土曜日夜6時枠で全50話が放送された。最高視聴率は8.2パーセントを記録。お茶の間向きの番組が揃う時間帯でアニメがこの数字を取るのは大健闘以上のことで、週刊ザテレビジョンでも主人公シン・アスカ(CV.鈴村健一)がレモンを持って表紙を飾るという特集号が組まれたものだ。そういった事情からも、「SEEDシリーズ」が当時どれだけずば抜けた人気を誇っていたのかが伺えるところだろう。 そんな期待の高まりで始まった本作は、『ガンダムSEED』から地続きの物語。C.E.(コズミック・イラ)と呼ばれる未来世紀、遺伝子調整により生まれた優秀な人類「コーディネイター」と自然のままに生まれた人類「ナチュラル」の対立は深刻なものとなり、ついには戦争へと発展する。戦争はキラ・ヤマト(CV.保志総一朗)、アスラン・ザラ(CV.石田彰)の活躍により終戦を告げたが、コーディネイターの軍事組織「ザフト」と、ナチュラルの「地球連合軍」に分かれた争いは消えたわけではなかった。その戦争終結から2年後、再び起こる戦争の火蓋が『SEED DESTINY』の入口になる。 ■人間臭さが人気、『SEED DESTINY』の主人公シン・アスカ 『SEED DESTINY』で新たな主人公として登場したのが、シン・アスカ(CV.鈴村健一)というザフトの少年だ。シンは、とにかく戦争が憎い。戦争により目の前で家族を亡くしているシンは、守りたいものを守れる力を求めてザフトに入隊した。しかし、純真すぎる想いは戦争の中心へと彼を駆り立てていき、平和への願いはただただ相手を倒すことだけに向けられていってしまう。そんなシンの心に唯一安らぎを与えてくれるのが、妹マユの携帯電話――手元に残った家族のただ1つの形見だった。戦いのあと、携帯に残るマユの声を繰り返し聴く姿があまりにも切なすぎて、今観ても胸を打たれるシーンだ。 ザフトの戦士と言っても、シンはこのときまだ16歳の少年。戦争や戦争を起こす人間に向けての大きな怒りから感情的になる面が目立ったが、むしろ剥き出しの人間らしさ部分が魅力になり、「『SEEDシリーズ』で一番好き」と話すファンも多い主人公でもある。そんなシンの戦争への怒りは第1話から爆発する。 前作とは構図が逆転し、ザフトが開発した新型ガンダムを強奪にくる地球連合軍。インパルスガンダムで出撃したシンは、「また戦争がしたいのか、アンタたちは!」と、怒りにも悲しみにも聴こえる叫びをこだまさせる。このラストシーンは間違いなく記憶に刻まれるもので、ネット上では「アニメ至上に残る傑作の1話」「続編モノの1話としてここまで完璧な掴みなのやっぱ痺れるわ」といった声が上がる傑作エピソードとして知られている。 ■キラ、アスランも登場する三つ巴のストーリー 主人公はシンに変わったが、絶大な人気を集めた前作のキラ、アスランもメインキャラとして登場し、3人を中心に動くドラマは『ガンダムSEED』以上に深く展開していく。平和な世界を目指し、中立国オーブを拠点に戦うことを決めたキラだったが、シンにとってキラが乗るフリーダムガンダムは、先の大戦で家族を巻き込んだ仇の機体。戦場で、シンはフリーダムガンダムに激しい憎悪をぶつけていく。そんなシンの怒りはザフトに復隊したアスランにも向けられていき、一方、キラとアスランも考えの違いから決別してしまい、三者の関係が複雑に絡み合うストーリーには一喜一憂、釘付けにされていく。 そうした物語の中、シンが信奉する人物として登場するのがプラント最高評議会議長のギルバート・デュランダル(CV.池田秀一)だ。表向きにはナチュラルとの融和を掲げる穏健派のデュランダルであったが、その裏ではプラントの歌姫ラクス・クラインの替え玉ミーア・キャンベルを操り、黒幕としての行動を早い段階から見せていく。デュランダルが画策していたのは「デスティニープラン」という計画。彼は遺伝子情報を元に個々人に適正職業、生き方を強制し、不満と争いの生まれない社会システム作りを目論んでいた。しかし、デスティニープランの実行は人の自由意思を排除し、生きる形を遺伝子に決められてしまうということだ。そこに人の成長はなく、先にあるのは停滞した未来だけ。キラはそんなデスティニープランを否定し、アスランもザフトを離反。2人は再び肩を並べ、デュランダルに与するシンと戦うことになる。 ■世界に争いを起こす裏側を描く 「SEEDシリーズ」世界の根底にあるのはコーディネイターとナチュラル、「2つの人類」の対立だ。コーディネイター側の黒幕であるデュランダルに対して、ナチュラル側にも黒幕が存在し、それが死の商人「ロゴス」と、「ブルーコスモス」と名乗る思想集団だ。ブルーコスモスは遺伝子調整で生まれたコーディネイターを生命倫理違反だと糾弾し、彼らの活動はテロにも及んでいる。そのブルーコスモスを支援するのが複合産業体のロゴス。地球各国の政治、経済に強い影響力を持つロゴスは戦争を陰で煽り、世界を混沌に導いてきた。 前作では公にはされなかった彼らの存在だが、『SEED DESTINY』では表舞台に引きずり出され、衆目の下に晒されていく。引きずり出したのは、デュランダルだった。先に黒幕と名指ししてしまったが、デュランダルを突き動かすのも争いの根絶にある。思想、格差、感情といったことから人の争いは生まれ、デュランダルがその解決策として出したのがデスティニープランであったのだ。「2つの人類」対立構造の表側を描いた『ガンダムSEED』に対して、『SEED DESTINY』は裏側も描く。そういった物語のバックボーンも今作を興味深く観られるポイントにもなっている。 ■キラ、アスランは第三勢力の下に さて、ここまで読んで、「ラクスはどうした?」と思っている方はいるだろう。前作ではラクス・クラインが平和の旗印となり「クライン派」が結成されたが、今作ではラクスの支援を受け、中立国オーブの姫カガリ・ユラ・アスハが真の平和を築く盟主として立つ。彼女を筆頭にした第三勢力は反デュランダル、反ロゴスを掲げ、キラ、アスランはその剣となり、最終決戦へと挑んでいく。 前回の「ガンダムSEED編」と同じく、最終決戦の中身については触れないでおくが、そこではシン、キラ、アスラン、デュランダルをはじめ、物語を牽引してきた数多くのキャラクターたちの運命的な戦いが展開されていく。その果てに二度目の大戦は終結に導かれるのだが、やはり世界から争いが消えたわけではなかった。火種はくすぶり続け、物語はさらに2年後、『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』へと続いていく。 以上、ここまでが「10分で読める『SEED DESTINY』の物語」だ。本来ならシンの仲間であるレイ・ザ・バレル、ルナマリア・ホーク。シンと出会う敵パイロットのステラ・ルーシェ。アスランとカガリのことなど、触れるべきことはまだ山程あるのだが、物語を分かりやすく理解するという意味で、最低限の大筋に留めさせてもらった。『SEED DESTINY」の物語を受けて、新作映画『SEED FREEDOM』ではどんな物語が展開していくのか。公開の日が待ち遠しい。