長野で一番の老舗企業は室町時代からのホテル 創業300年以上は20社
長野県で一番の老舗企業は創業600年近いホテル――。東京商工リサーチが昨年12月にまとめた全国の創業100年以上の老舗企業のうち、長野県では室町時代に創業した佐久市の「佐久ホテル」が県内で最も古い歴史を持つことが分かりました。同ホテルは長い間止めてあった温泉の源泉を復活させるなど、新しい時代に向けた経営戦略を展開しています。 【写真】立山など自然の魅力と新幹線効果? 長野、石川で外国人宿泊が3割増
足利将軍家からの感謝状も残る
東京商工リサーチによると長野県内の創業100年以上の企業は2017年現在883社。このうち300年以上は20社を占め、500年以上は2社でした。最古の佐久ホテルは1428(正長1)年の室町時代からで、創業588年になります。 次いで飯田市の松岡屋醸造場(みそ製造業)の1534年、長野市の酒千蔵野(しゅせんくらの・清酒製造業)の1540年創業。10位までは鋳物製造業、公衆浴場、旅館、建築材料卸、化粧品小売業などが続きます。
佐久ホテルの篠澤明剛(ささざわ・あきたけ)社長によると、地元の望月城の望月河内守が現在の佐久ホテルの場所で領主として宿泊や料理を提供し、開祖とされます。以後、勅使の接待なども行い、当時の足利将軍家からの感謝状など多くの古文書が残っています。 このほか天文年間に武田信玄を接待し伝承として信玄が入浴、一族の篠澤対馬守信重次男の印月斎一峯が関ケ原の戦いに真田軍として出陣、大阪冬の陣に一族が出兵―などを年表に記しています。 篠澤社長によると、幕末に蒸気船による客船事業に出資した先祖が、鉄道の普及で事業に失敗。現在の60億円に相当する損害を出したことから家訓として、(1)不慣れな事業には手を出すな、(2)米相場や賭け事は控えなさい――などの戒めを残しました。 インバウンドなど新しい国際観光の動きを迎えて、ホテル・旅館業界も試練の時。佐久ホテルは70年前に閉鎖したホテル内にある源泉を昨年復活させ、創業600年に向けて新戦略を模索しています。「復活した温泉に入った外国人女性の間で評判になったため、外国人宿泊客にも喜ばれる工夫をしていきたい」と篠澤社長。