芸能人のYouTube「これは経費で落ちますか?」。税理士に聞いてみた
今やテレビだけでなく、YouTubeでも芸能人を気軽に観られるようになった。YouTubeではテレビとは異なり、日常生活や素に近い様子を垣間見れるシーンも多く、親近感を感じている人も多いのではないだろうか。 ところで、YouTubeで収入を得るために直接必要な支出は、原則経費として落とすことができる。 特に芸能人の場合、高級時計や車を自腹で購入したり、芸能人同士で贅沢な宿に泊まったりなど、高額な支出を伴う企画も多く目にする。 では、芸能人がYouTube配信を行う場合、どのような支出であれば経費と認められるのだろうか。また経費が大金であるほど節税になるのだろうか。冨田建税理士に聞いた。 ●経費と認められるかは社会的通念に照らして判断される 目線としては、「事業利益獲得のための経費と言えるか」「一般的水準や社会的通念と比較して過大でないか」「毎年、同様の基準で経費計上しているか」が経費として税務署が是認する目安です。 ただ、本件に当てはめると、イレギュラーな支出であれば「毎年、同様の基準」の判定は微妙であり、「一般的水準~と比較して」においても、一般的な動画関連の経費の判定も十分に相場が形成されていないのが実態でしょう。 個人的な意見ですが、芸能人の動画であってもその支出が何十万円ともなると、動画自体でかなり稼げたり、芸能の本業の利益獲得の大幅な向上に寄与することが明確ならよいとは思いますが、社会的通念に照らして微妙な場合もあるかと思います。 また、仮に経費計上が認められたとしても、高額過ぎる場合は固定資産扱いで減価償却で数年に渡り分散して経費計上となる場合がある点と、取得した資産をその後の個人の生活等の利用に振り向けると、理論的には経費計上が微妙になる点も念頭におくべきでしょう。 ●実際には経費になるかを意識せず、稼ぎを増やすほうが実入りは多くなる また、「経費の一部しか税額逓減には作用しない」ため、基本的には「経費が少ない」方が税額後の実入りは増えます。 ただし、今期の利益が多く来期の見込み利益が少ない場合は、来期の税率が下がる場合もありますので、このような場合は「今期でも来期でもどっちで払ってもよい経費」なら今期の経費を増やすのも手でしょう。そのような場合もなくはないですが、基本的には経費が少ない方が税額後の手取り分は多くなります。 所得税等の税金は、稼ぎに連動して増えます。ですので、経費計上に力点を置き過ぎず、「税額が増えてもそれ以上に稼ぎの増加を大きくすればよい」との姿勢で、過度に「税務上の経費か」を意識し過ぎず自由に行動し、結果として「税務上で認められる経費を計上した」の方が、よい動画ができるのではないでしょうか。 そして、それは芸能人の動画撮影に限らず、幅広い事業主の活動についても同様のことが言えるのではないでしょうか。 編集部注:YouTubeの経費においては、収益を得るための支出であるか、プライベートで使用するものではないか、YouTubeで収益が出ているかなどで総合的に判断されるため、判断に迷う場合は税理士に相談することをおすすめします。 【取材協力税理士】 冨田 建税理士・不動産鑑定士・公認会計士 43都道府県で不動産鑑定業務の傍ら、各種講演・執筆も行う。令和3年に「不動産評価のしくみがわかる本」(同文舘出版)を上梓し増刷。令和5年春には相続税・所得税等を解説する「図解でわかる 土地・建物の税金と評価」(日本実業出版社) を上梓した。 事務所名 : 冨田 建不動産鑑定士・公認会計士・税理士事務所、冨田会計・不動産鑑定株式会社 事務所URL:https://tomitacparea.com
弁護士ドットコムニュース編集部