プーチンに変化か?和平交渉に「前向きな姿勢」...東シベリアの中高生と語り合う
<「無法者」への対処は必要だが、今後、和平交渉の「意欲」が生まれるだろうと発言>
ウクライナ軍がロシア西部クルスク州への越境攻撃を続けるなか、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の和平交渉に対する姿勢に変化が生じたようだ。 【動画】生徒の背筋はピン…東シベリアのトゥヴァ共和国の学校で生徒たちと語り合うプーチン大統領 プーチンは9月2日に東シベリアのトゥバにある学校を訪問した際に、生徒たちを前に、今後和平交渉に入る「意欲」が生まれてくるだろうと示唆し、次のように述べた。 「この挑発[ウクライナによる越境攻撃]も失敗に終わるだろうと確信している。そして言葉だけではなく実際に行動によって和平交渉に進み、これらの問題を平和的な手段で解決しようとする意欲が生まれるだろう。我々はこれ[平和的な解決]を決して断念していなかった。だがもちろん、ロシア連邦の領土に侵入した無法者たちには対処しなければならない」 和平交渉をめぐるプーチンの最近の発言は、ウクライナ軍がクルスク州への越境攻撃を開始した当初とは大きく変わっている。 プーチンは6月には、ウクライナがドネツク、ルハンスク、ザポリージャとヘルソン[ロシアが一方的に併合したウクライナ東部の4つの州]から軍を撤退させ、NATOへの加盟方針を撤回しない限り、ロシアは和平交渉に応じないと主張していた。 ■越境攻撃がウクライナにもたらす「交渉力」 ウクライナのシンクタンク「防衛戦略センター」の安全保障問題担当プログラムディレクターであるビクトリア・ウドビチェンコは本誌に対して、プーチンは「ロシア勝利の可能性が低い」から和平交渉を後押ししているのだと指摘し、次のように述べた。 「ロシアは、自分たちが占領している全ての領土を保持すること目的とした『和平交渉』を後押しし始めている。その一方でロシアは現在も、エネルギー施設や民間インフラ、住宅用建物を攻撃してウクライナを脅かし続けている」 欧州政策分析センター(CEPA)の研究員であるエリナ・ベケトワは本誌に対して、クルスクでの作戦はウクライナが「交渉力のある立場で話し合いに臨むことができる」ことを示していると述べた。 「ウクライナに対する本格侵攻を開始して以降、プーチンはウクライナについて、自分たちの領土を守るのをやめて自国の領土から撤退せざるを得なかったと皮肉な発言ばかりしてきた」とベケトワは指摘し、さらにこう続けた。 「ウクライナが今後さらに作戦を成功させて進軍を果たしていくにつれ、ロシアは『口先ではなく行動によって』和平交渉に向かうようになるだろう」 ロシア通信(RIA)によれば、プーチンは2日にトゥバを訪問した際に、クルスク州におけるウクライナ軍の「挑発行為」は、ウクライナ東部ドネツク州でのロシア軍の進軍を阻止してはいないと主張。ロシア軍はクルスク州において「平方キロメートル単位で」領土を奪還しており、ウクライナ軍による越境攻撃は「対処がなされる」だろうと述べた。 プーチンはまた現地の学校の子どもたちに対して、ウクライナによるクルスク州への越境攻撃を受けて、ロシアがウクライナ東部の前線での進軍をやめることはないと改めて強調した。 「彼らはウクライナ東部ドンバス地域の複数の要衝でロシア軍の攻勢を阻止しようと計算していた。だがその結果は明らかだ。彼らはドンバス地域でロシア軍の進軍を止めることができなかった」と述べ、さらにこうつけ加えた。 「結果は明らかだ。確かに、とりわけクルスク州の人々は困難な体験に直面している。だが敵はドンバス地方でのロシア軍の攻勢を止めるという主な目的を達成していない」 プーチンはまた、クルスク州への越境攻撃は、ウクライナが将来の和平交渉で自分たちの立場を強化するために行っているものだとも示唆した。 米シンクタンクの戦争研究所は、クルスク州への越境攻撃によってロシア軍が優先順位の高い前線から部隊を(国内に)再配置せざるを得なくなり、そのほかの前線でのロシア軍の攻勢が停滞する可能性があるとの見方を示していた。 こうしたなかウクライナのドミトロ・クレバ外相は2日、ロシアがミサイルやドローンを使ってウクライナを相次いで攻撃したことを受け、西側の同盟諸国に対して、ウクライナ軍がロシア領内への長距離攻撃を行うことを認めるよう促した。
バラル・ラーマン