ピアニスト、アイスホッケー選手、土木設計家 木村拓哉が演じる“職業”はなぜカッコいい?
『ロングバケーション』では繊細なピアニストに扮した木村拓哉
『ロングバケーション』の瀬名は、自分がシャイで自信がないほうだとわかってはいるのだが、プライドはやや高め。それは、得意のピアノを誰かのために弾いたことがないという瀬名の感覚に大きく表れている。それに、瀬名は一大決心をしてコンクールに挑戦することに決めるが、指導者から厳しい評価を受け、自身の才能の限界を感じてしまう。そしてピアノを弾かなくなるどころか、音楽教室のバイトも辞めてしまうのだ。とても繊細で、大きなコンクールだけではなく、ピアニストとしてやっていけるのか、こちらが不安になってしまうほどだ。でも全てがパーフェクトじゃないからこそ、観ている側の心の中で「カッコいい」と「こんな自分でもなれるかも」が共存するのではないだろうか。事実、木村が出演していたドラマに影響されて、ピアニストやホッケー選手になった人もいるという。 長年、自身が第一線で活躍する役を演じることが多かった木村だが、年齢を重ねて、最近では指導者のような、立場が上の人物を演じることも増えた。『Believe-君にかける橋-』もそのひとつである。狩山は技術者として自らも橋の設計に携わりながら、部長として上役との折衝も、現場とのやりとりもこなす。それなのに、狩山はどこか飄々としていて爽やかだ。若手社員の本宮(山本舞香)や南雲(一ノ瀬颯)が狩山のことを茶化したり、軽口を叩いたりしていたが、彼らと狩山の関係はそれさえも許されるフランクなものなのだ。こんなにもカッコよくて、仕事ができる上司の下で働けたらきっと仕事も楽しいはずだ。狩山の姿は“理想の上司”といっても過言ではないだろう。数年後、狩山のような人を目指して、信頼される上司になっている人もいたりするのだろうか。それはそれでとてもワクワクする。 第1話が、狩山が被告人であるところからスタートしたのにはとても驚いたが、物語はこれからだ。狩山がこの苦難から這い上がっていくところを応援していきたい。
久保田ひかる