「自転車に乗るのが不安」で病院に来た90代男性が豹変!医師に突然キレた驚愕の理由
「そんなものは、年寄りが乗るもんだ!」 くり返しますが、この声の主は90代です。これが典型例であり、ある種の現実なのです。 ● 老化は誰にも起こる変化=つまり悪ではない! 人間は等しく年をとります。 年をとれば、体中のあらゆる部分が変化していきます。耳が聞こえにくくなったり、目が見えづらくなったり。 これは自然のことで、誰にでも起こることです。だから気に病むことはありませんし、無理に抗(あらが)う必要もありません。 もっとポジティブにとらえましょう。だから私は「衰え」ではなく、ここではあえて「変化」と表現しました。 もうひとつ、ポイントとして挙げておきたいのは、体力、記憶力、五感などは「おしなべて落ちる」とイメージしている高齢者が多いということです。 すぐに疲れたり、物忘れが多くなったり、耳が聞こえにくくなったりということは、どれもが並行して進んでいくと思っています。 しかし実際には個人差があって、進行度合いはばらばらなんですよね。落ちる部分とそれほど落ちない部分が混在しています。 いうなれば、でこぼこの状態です。 すると老害と思われがちな人は、あまり落ちていない部分(例えば、聴力)を基準にして、「いやいや、自分はまだまだ耳が聞こえるから大丈夫」となります。 明らかに歩くのが遅くなっていても、視力が低下していても、そこに意識を向けようとはしません。 というより、聴力が落ちていないことに引っ張られるかたちで、それ以外の部分が落ちていることに気づけていないのです。 一方、若者は落ちている部分を基準に判断します。 だから、高齢者が「自分はまだまだ若い」と思っている姿勢に眉をひそめ、「どれもこれも、全然ダメじゃん」となるのです。 この感覚のズレが、「老害」という概念を生む温床になります。
● 高齢者が同じ話を何度もくり返してしまう本当の理由 先ほど紹介した消防団の大先輩Yさんのように、同じ武勇伝をくり返し話す高齢者は大勢います。 理由を説明しましょう。 まず、人間は加齢によって記憶力が低下していきます。50代から始まり、60~70代でピークを迎えるのが一般的なパターンです(※1)。 ただし、低下する記憶力と、あまり低下しない記憶力があります。 20代前後の記憶は残りやすく、昔の話はなかなか忘れません。長期的な記憶は、短期的に新しく入れた記憶よりも色褪せにくいといわれています。 また、過去の記憶は嫌なことから消えていき、いいことは残りやすいという研究結果もあります。これらが、老害力を上げる要因になっているとお考えください。 例えばYさんの場合、1~2カ月前の飲み会で何をテーマに話したかは忘れてしまっていても、そこで話した大昔の体験の内容はしっかり覚えているのです。 武勇伝などの自慢話が多くなるのは、嫌な記憶ほど忘れやすく、いい記憶は残りやすいという人間の特性によります。 だから、若者に過去の武勇伝を話したことは忘れてしまっている(あるいは曖昧になっている)にもかかわらず、その武勇伝の内容は鮮明に記憶されているため、何度もその話題に触れるという現象が起こるのです。 若者たちからすれば、老害的行動かもしれませんが、そこにはやむを得ず起こる理由が存在するということを、理解しなければならないでしょう。 Yさんはただただ武勇伝をひけらかしたいのではありません。ちゃんと覚えていて、なおかつ話題にしやすい話を持ち出すことが、結果的に同じ話のくり返しになり、周囲には“お決まりの自慢話”に聞こえてしまうだけなのです。 【参考文献】 1)佐藤眞一ら:『よくわかる高齢者心理学』 ミネルヴァ書房
平松類