第二次大戦の米軍「血の第100爆撃隊」がドラマに、スタッフが語る本気の再現度がすごすぎる
トム・ハンクス、スピルバーグらによる『マスターズ・オブ・ザ・エアー』、当時を知る人が涙を流す忠実さ
第二次世界大戦中、連合国軍による対ナチス総攻撃を支援した米第8空軍の第100爆撃隊が、「ブラッディ・ハンドレッズ(血の第100部隊)」と呼ばれるようになったのにはわけがある。彼らは上空7600メートルを編隊飛行して危険な日中の爆撃作戦を遂行し、多くの死傷者を出した悲運の部隊だった。 ギャラリー:米軍「血の第100爆撃隊」がドラマに、すごすぎる再現度 写真8点 その第100爆撃隊に属していた個性豊かな兵士たちの物語を9話にわたるドラマシリーズで描いた『マスターズ・オブ・ザ・エアー』が、1月26日よりApple TV+で配信されている。ゲイリー・ゴーツマン氏、トム・ハンクス氏、スティーブン・スピルバーグ氏が製作総指揮を務め、共同製作者のジョン・オーロフ氏が脚本も担当した。 実話を基にしたドナルド・L・ミラー氏による同名の本をドラマ化するのは、自身が初めて脚本を手掛けた『バンド・オブ・ブラザース』と比較しても大変な作業だったと、オーロフ氏は語る。総製作費2億5000万~3億ドル(約370億~440億円)と推定される本作は、『バンド・オブ・ブラザース』と『ザ・パシフィック』に続くシリーズ第3弾とされている。 歴史的に正確な脚本を書くという任務を引き受けたオーロフ氏は、1年かけて30冊以上の本や雑誌、日記を読み、アーカイブや口述記録をあさり、大西洋両岸の基地や飛行場、博物館を訪れた。その結果、記録とほとんど違わない「あらゆる段階においてこれまで以上に野心的なドラマ」が完成したと自信をのぞかせる。 そのオーロフ氏が、出演者のアンソニー・ボイル氏、ネイト・マン氏、カラム・ターナー氏らとともにナショナル ジオグラフィックのインタビューに応じ、ドラマの裏話を語ってくれた。
爆撃機の再現度
空中戦を描く際に絶対に欠かせないのは、飛行機だ。「空飛ぶ要塞」と呼ばれた第100爆撃隊のボーイングB-17を外から内まで完璧に再現することが、製作のなかで最も重要な部分だったと、共同製作者のデビッド・コーツワース氏は言う。オーロフ氏も、B-17を登場人物の一人のように感じていた。 第二次世界大戦中におよそ1万2000機製造されたB-17だが、現在も飛行可能な機体はわずかしか残っていない。そして、そのいずれもドラマには使用されていない。そんな爆撃機隊を再現するには、少しばかりの創造力と、CGI技術の助けを借りる必要があった。 製作チームは、ドラマのために2機のB‐17のレプリカを一からつくり上げた。1機は自走し、もう1機は牽引して動かすことができたが、2機とも飛ぶ機能は備えていなかった(こちらは特殊効果に頼った)。とはいえ、激しい撮影に耐えるだけの強度は必要だった。 両端の幅が30メートルにもおよぶ翼を構造的に強固にするのが特に大変だったと、オーロフ氏は言う。ある時、レプリカがバランスを崩し、「普通のセットの仕掛け」も「映画の魔法」も効かなかったことがあった。機体を水平に保ち、折れることなく柔軟にしなる翼を作るには、ボーイング社の実際の建造ガイドラインに従う必要があった。 そのほか、B-17の機首やコックピット内部だけのレプリカも製作した。 航空士なのに飛行機酔いしてしまうハリー・クロスビー少佐を演じたボイル氏は、現場でのバーチャルプロダクションやCGIに加え、計器盤の最も小さなスイッチから高度計に至るまですべて忠実に再現されたコックピットの模型に感嘆した。「おかげで、ドラマの世界に完全に没入することができました」 出演者たちはその細かさに実際の作戦の重要性を実感するとともに、全体の77%が命を落とし、負傷し、行方不明になり、戦争捕虜になったという第100部隊に対して敬意の念を抱いたという。