羽生の史上最強プログラムに隠された“秘技”
ちなみに、この左手を氷上に着けて上半身を氷上に平行にするほどに低い姿勢を取るハイドロブレーディングは、1990年代に、カナダのシェイリーン・ボーンとヴィクター・クラーツのペアが、アイスダンスで披露して有名にしたもので、そのシェイリーンが、羽生の現在のフリーの振付師。元祖から直伝された滑りというわけである。 「競技としてのフィギュアの進化をつきつめる、これまで見たことのない難しいプログラムへの挑戦がスタートしましたね。後半の4回転も手はつきましたが、評価すべき結果でした。サルコウ、トゥループ、トリプルアクセルと3種類のジャンプに得意、不得意がないオールマイティプレーヤーで、ジャンプもパワー系ではないので、体力を大きく消耗させず、これほどの難しいプログラムへの挑戦が可能なんだと思います。後半は、疲労が顕著でしたが、かなりのトレーニングを積んできたことは伺えました。技術、体力、そして気力。これらが揃わないとできないプログラムです。 まだ、つなぎなどに荒い部分があり、ジャンプもふたつミスをしたわけで、未完成ですが、今後、滑り込んでいく中でアクシデントがなければ12月の全日本には、完成形に近いものを見せてくれるのではないでしょうか。ノーミスで滑れば、フリーの200点も不可能ではなく、誰も手の届かない場所にいくでしょう」とは、今川さんの見立て。次戦の出場予定は、11月27日に長野で始まるNHK杯。史上最強のプログラムをノーミスで滑りきる日が楽しみである。