人間とタコは「友だち」になれる? なぜ科学者は今タコに注目する? タコ博士に聞いてみた
――そういった異分野の専門家と共同研究をする機会はあるのでしょうか?
今まさに進行中のとてもエキサイティングなプロジェクトがありますよ。ナショナル ジオグラフィック協会のサポートにより、タコと魚が協力して行う狩りを調査しています。 AIとロボット工学の専門家が制作したロボットの魚を水中に放ち、私たちはそのロボット・フィッシュの視点でタコの行動を観察するのです。2匹の自然の生き物の関係性や相互作用、それぞれの行動を分離して理解するのは非常に難しいですが、そのうちの1匹をコントロール可能なロボット・フィッシュに置き換えることで、特定の行動をするよう指示したロボットに対してタコがどのように反応するかを見ることができます。
――タコの研究者や水族館の飼育係は、タコのいたずらや想定外の行動によく驚かされるそうですが、シュネル博士のタコ・エピソードを教えてください。
そうですね……タコには骨がなく、どんな狭いスペースにも入り込むことができるので、逃げるのがとても上手です。私が研究室に入ってふと見たら、セキュリティー万全なはずの水槽の外に出ているタコと目が合ったことがあります。タコは一生懸命、排水口を探しているようでした。脱走上手なタコはとても難易度の高い研究対象なんです(笑) 最近の私のお気に入りのタコ・エピソードは、今回の番組の制作中にあったことです。メジロダコ(英名ココナッツ・オクトパス)というタコは、不毛で開けた海域に生息しています。進化の過程で大昔に貝殻を脱ぎ捨てたにもかかわらず、せっせと貝殻やココナッツを集めては、移動用の家として使用しています。 私はロケでこの行動を見られるのを楽しみにしていたのですが、実際に目の前で起きたのは、それ以上のことでした。大きなエビの一種に襲われたメジロダコが、貝殻を振りかざして盾として使い、自分の身を守ったのです。 これは、タコが持つ複雑な知性を示す美しい瞬間でした。 このタコは、骨を持たない自分の体を捕食者から守るすべがないことを理解していただけでなく、革新的なアイディアと、我が身に降りかかっている問題に対する解決策を見出したのです。